市立保育園の廃園問題で小金井市長が辞職 専決処分を市議会が不承認 しかし効力は残り…保護者が抗議「責任放棄。最悪の置き土産」
20対2の反対多数 異例の展開
7日夜の市議会定例会終了後、西岡市長は記者団に「自ら市長選に出馬することはない」と出直し市長選への出馬を否定。「専決処分の承認議案が不承認になった市長としての責任をとらなくてはならない。地方自治法に『必要な措置を講ずる』とあり、辞職は自治法に基づく判断でもある」と述べた。
西岡市長は小金井市議、都議を経て2015年の市長選で初当選、現在2期目。都議選で落選後は一時、民間保育園で事務長を務めた。昨年、タレントの友寄蓮さんと結婚、1児の父。
不承認なら「新たな対応」必要
専決処分の承認を巡り、7日の本会議で西岡市長は、廃園に必要な条例改正案が9月27日、市議会厚生文教委員会で継続審議となったことを挙げ「(専決処分できる条件を定めた)地方自治法の『議会が議決しないとき』に該当すると判断した」と繰り返した。
市議からは「議会の議決権を奪う市長の暴走だ」と厳しい意見が相次いだ。これまで廃園方針を認めてきた市議からも「専決処分のニュースに頭が真っ白になった」と疑問の声が出た。
その後の採決で、専決処分の不承認が決まり、西岡市長は庁内で協議。地方自治法では不承認の場合に市側に新たな対応をとるよう求めており、方針の変更を迫られる形となっていた。
今回の専決処分を巡っては、市役所内からも懸念が出ていた。東京新聞が入手した庁議録によると、処分前日の先月28日、市幹部らから「法律的に専決の理由にあたるのか」などの質問が続出した。
「条例改正を取り消す議案を」
大正大の江藤俊昭教授(地方自治)は「不承認は妥当。保育という住民に密着した問題で市議会が継続審議を決めたのに、市長が専決処分するのは制度を逸脱した暴走だし、住民に失礼だ。市は条例改正を取り消す議案を出し、あらためて議論すべきだ」と話す。
小金井市は昨年7月、市立5園のうち3園の廃止方針を示した。2園の廃止だけで10年で27億円をコスト削減可能と試算したが、廃園に伴い子どもが移る民間園への市負担分を計上せず、削減幅を約11億円多く見せて住民説明会などで発表していたことなどに批判が出た。市は今月4日、廃園を前提に新年度の入園希望者の募集を始めている。
不承認でも残る専決処分の効力 2園は段階的に廃園へ 保護者が抗議集会
「近くに引っ越してきたのに」「専決処分を取り消すべきだ」
市は市立保育園5園のうち3園を廃園する方針。西岡市長は9月、市議会の議決を得ずに専決処分として、うち2園を先行して廃園するための条例改正をした。専決処分は7日の市議会本会議で不承認となったが効力は失われず、2園は来春からゼロ歳児の募集を停止、段階的に縮小されて廃園になる見通し。
集会に参加した女性(29)は廃園対象の一つ「さくら保育園」の1歳児クラスに長男が通う。生後3カ月の次男も来年から同じ保育園に通わせるつもりでいたところ、専決処分後に園のパンフレットのゼロ歳児の欄に斜線が引かれているのを見てショックを受けた。女性は「職場が近いこの保育園の近くに引っ越してきたのに。このままでは仕事を辞めなければいけないかも」と不安そうだった。
西岡市長は退職届の同意を受けた7日の市議会本会議後、記者団の取材に応じ、任期途中の辞職に「極めて無念。市民の皆さまに大変申し訳ない」とする一方、条例改正には「専決処分を行ったことは適切な判断だった」と主張していた。(花井勝規、松島京太)