都内21カ所で保育所運営「コスモズ」 補助金2000万円を不正受給の疑い 三鷹・小平での開設時に
対象外の工事費をめぐり
コスモズは1974年、小金井市に無認可保育所を設立し、2012年には法人化。創業者で元市議の佐野浩氏(80)が、現在も代表取締役と理事長を務める。佐野氏は本紙の取材に「現在、自主点検中でまだ報告できる時期ではない。できるだけ誠実に対応したい」と話した。
不正受給があったとされるのは、三鷹市の「みたいぐコスモ保育園」(開設2019年4月、定員109人)と小平市の「こだすずコスモ保育園」(開設2022年4月、定員80人)。
保育所を開設する際は、保育室などがある建物本体の建設は補助対象だが、フェンスや植栽などの外構工事は対象外。しかし三鷹市などによると、コスモズは両保育所の外構工事費を、本体工事費などに組み入れて補助金申請したとみられる。工事はそれぞれ多摩地域の別業者が請け負っており、工事費の項目の付け替えでコスモズ側の意向が働いた可能性もあるという。
幹部が陳謝、返済の意思
三鷹、小平両市によると、1月に入り佐野氏やコスモズ幹部が両市役所を訪問し「本来、計上してはいけない費目を含めて申請した」などと陳謝し、返済の意思を示したという。両市に伝えた過大分は計2000万円余りだが、コスモズは社内調査を続けており、今後、増える可能性もある。
コスモズは、待機児童解消に向けた自治体の施策を受け2014年以降、都内に16園を相次いで新規開設し、2園をグループに組み込むなどして成長。園児数計1400人規模にまで急拡大していた。関係会社に「市民運動新聞社」「コスモ教育センター」などがある。(花井勝規)
なぜ保育所で不正受給が続く? 利益優先の企業が参入、甘い行政監査
運営費「弾力運用」に規制が必要
民間保育所の開設や運営に使われる公費は、事業者の申請に基づき国や自治体が支給。待機児童が社会課題となった2010年代以降、受け皿整備で補助金を手厚くし、利益目的の企業の参入も許した。
保育問題に詳しいジャーナリストの小林美希さんは「見積額を高くするなど故意に不正をする事業者もいる。しかし行政の監査担当者は全く足りず、強化が必要だ」と話す。運営費の一部を流用する「弾力運用」名目で使途をごまかすことも可能で「弾力運用を規制しないと不正は減らない」と小林さんは強調する。
基本となる公定価格の引き上げを
保育の充実を掲げる自治体が独自に、運営費の補助金を設けるなどのケースがあり、それがかえって手続きの複雑化を招き、ミスで過大請求になる場合もある。
保育士や経営者らでつくる「全国保育団体連絡会」(東京)の実方(じつかた)伸子副会長は「運営費の基本となる国が定める公定価格を引き上げ、制度や会計の仕組みをシンプルにすべきだ」と話した。(奥野斐)
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