こども家庭庁が4月スタート 就学前の育ちを支える仕組みは? 有識者懇談会座長代理・大豆生田啓友さんに聞く
子どもを支える人たちも大切に
-就学前は乳幼児期から保育所、幼稚園など幅広い育ちの環境が考えられる。どんな指針になるのか。
まだ指針の構成案の段階だが、産前産後から入学までの重要な時期を、子どもを中心に置いて社会全体で守るという理念を打ち出した。すべての子どもの権利を守ろうと2022年に制定された「こども基本法」にのっとり、子どもの権利が尊重される社会をどうつくるか、日常的に子どもに関わらない人にも示すという画期的な内容だ。懇談会には保育関係者や小児科医、地域の子育て支援に詳しい人もいて、幅広い立場から、社会のこれからのあり方を議論している。
-強調したいことは。
「子育てをする人がこどもの成長の喜びを実感でき、それを支える社会もこどもの成長を一緒に喜び合える」というのを理念に入れた。「こどもまんなか社会」の実現のためには、子どもを支える人たちも大切にされるべきだ。
幼児教育と保育は一体化の方向
-これまで幼稚園の管轄は文部科学省、保育所は厚生労働省というように行政の縦割り感が強かった。こども家庭庁の果たすべき役割は。
幼児教育と保育は一体化する方向に進んでいて、その両面から子育てを支援する一体的な取り組みが求められる。幼稚園など学校教育の機能は今まで通り文科省が担うが、連携は重要になる。こども家庭庁では各組織を横断し、子どもの居場所づくりやいじめ防止にも取り組んでほしい。
-22年に生まれた赤ちゃんの数は統計以来初めて80万人を切った。その要因をどう考えるか。
要因は多様だが、子どもを生み育てることに困難を感じる社会になっていることが一因。子どもや子どもに関わる人が尊重されていないことが、根幹にあると考える。核家族が多くなり、地域の中で子育て家庭が孤立している。保育所や公園から聞こえる子どもの声をうるさいと訴える人もいる。子どもに日常的に関わらない人が増えて、いとおしさを感じにくいのではないか。
保育士の配置基準や処遇改善を
-今の子育て環境は。
危機的だ。コロナ禍による密室育児の影響もあり、子育てに否定的な感情を持つ保護者が増えたという調査もある。現場から悲鳴が上がっているとも言える。保護者や保育者に無理がかかっており、その影響があると推察する。社会全体での支えが不可欠だ。
-今後取り組むべき課題は。
すべての子どもの身体的、精神的な幸福のため、産前産後から切れ目ない支援が必要だ。保育所が担う役割は大きくなり、保育の質向上が求められる。
どの保育所でも子ども主体の保育が保障されるよう、配置基準や保育士の処遇を改善してほしい。また、全世代が子育てに関わる意識改革と仕組みづくりのため、企業はますますワークライフバランスに配慮してほしい。
大豆生田啓友(おおまめうだ・ひろとも)
玉川大教育学部教授で、専門は保育学、子育て支援。幼稚園教諭の経験を持つ。保育の質向上のための実践研究を行うほか、写真などで子どもの姿を記録する「保育ドキュメンテーション」に詳しい。
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