保育士の配置基準「改善」するけど「改定」はしない…どういうこと!? 「異次元の少子化対策」たたき台はミスリード
喜んだ保育士が「え?」…ガッカリ
「え? 配置基準は変えないの」。たたき台の発表後、基準改定かと喜んだ保育士らが、SNSに「間違えて捉えるところだった」「異次元って言うならちゃんと配置基準を変えて」などと書き込んだ。
たたき台は、こども家庭庁のウェブサイトにも掲載され「職員配置基準について1歳児は6対1から5対1へ、4・5歳児は30対1から25対1へと改善する」とある。1歳児なら、保育士1人が受け持つ子どもの基準が、6人から5人に減ると読める。特に4、5歳児は1948年の基準制定から75年間変わっていない。こども家庭庁には「配置基準を改定するのか」との問い合わせも来ているという。
手厚く配置した施設に運営費を加算
ところが小倉氏は、4日の参院内閣委員会で「(基準を引き上げると)全施設で基準に見合う保育士を確保する必要が出て、現場に混乱が生じる可能性がある」と説明。保育士を手厚く配置した施設に運営費を加算して支給する方式で対応するとした。
つまり「基準を改善」という表現はミスリードになる。しかも保育士を増やさない選択も残り、子どもが受ける福祉サービスに格差が生じる懸念もある。それなのになぜ、このような書きぶりになったのか。こども家庭庁の担当者は「一般の人には分かりにくいかもしれない。だが、公表したのはたたき台。今後、具体的な案を練っていく」と言葉を濁す。
3歳児の際は私立保育所の9割で達成
配置を充実させるための支給額の引き上げは2015年度にも、3歳児を対象に行われた。保育士1人が受け持つ子を20人から15人に減らせば、保育所へ支給する運営費を加算する施策で、内閣府の調査によると、私立認可保育所の加算実施率は89.3%(2022年3月時点)に上る。
このときも基準はそのままだったが、既に私立保育所の約9割で保育士1人で受け持つ人数が減ったことになる。猶予期間を設けるなどすれば、基準改善に伴う混乱は防げそうだ。しかし小倉氏は11日の会見で「約1割といえども保育現場に直ちに混乱が生じる可能性を防がなければいけない。(基準見直しは)慎重に検討する必要がある」と繰り返した。
愛知県の保育士らが始めたキャンペーン「子どもたちにもう1人保育士を!」の呼び掛け人で、名古屋市の認可保育所元園長の平松知子さんは「保育士の配置改善が明記されたことはうれしいが、加算は第一歩。法令上の基準が変わり、名実ともに『改善』といえるまで声を上げ、注視していきたい」と話した。
コメント