保育園運営コスモズの不正受給は総額1億円超に 建設費を水増し、理事長側に還流 一部自治体は告訴検討
小金井市でも判明、1区4市に
新たな不正受給は、コスモズが弁護13人に委嘱して設けた「社外調査委員会」が15日付でまとめた報告書で明らかになった。報告書は、少なくとも不正のあった杉並区と三鷹市、小平市、武蔵野市、小金井市の4市に提出された。
報告書によると、コスモズは小金井市に2021年4月にオープンした「十八コスモ保育園」(定員58人)の建設費を約420万円水増しして補助金を受給。施工した東村山市の建設業者は同額を、コスモズ代表取締役理事長で元小金井市議の佐野浩氏(80)が編集委員を務める「市民運動新聞」に広告費として支払ったとされる。
杉並区では工事費を二重請求
杉並区の「成田コスモ保育園」では、防音フェンス工事費約1700万円の二重請求が新たに浮上。同園でこれまでに判明していた不正を合わせると計約4560万円となった。この工事でも、建設業者から約240万円が、佐野氏側に新聞広告費として支払われていたという。
報告書では、関係市区への返金を求めたほか、数百万円規模の工事代金を広告費として還流させていた佐野理事長の責任を厳しく指摘。辞職してコスモズ専務の妻に代表取締役を譲った上で、これまでの役員報酬で不正受給分の一部を返還するよう求めている。
不正ではなく「過大」と表現
不正受給の調査は当初、コスモズの顧問弁護士の事務所が担当し、3月までにまとめた報告書によれば、不正受給の総額は約8250万円だった。しかし、自治体側から客観性を担保するように要請され、4月に別の弁護士13人で委員会を設置し、佐野理事長ら社内関係者や建設会社などから聴取を進めてきた。
ただ報告書で不正受給を「過大受給」と表現し、妻を後継者に推していることに、自治体の担当者からは「意図的な不正行為がうかがえるのにおかしい」「身内で経営を続けるのか」などと批判も出ている。不正請求を受けた自治体は4月下旬から緊急部長会や課長級会議を重ね、対応を検討している。
待機児童対策で施設急増 甘かった行政チェック
◇保育制度に詳しい保育システム研究所代表の吉田正幸さんの話
複数の自治体で何度も受給しており非常に悪質。行政のチェックも甘かったといえる。2000年に株式会社の保育事業参入が可能となり待機児童解消の掛け声の下、一気に施設整備が進む中で生じた行政チェックの隙間を営利目的の企業に突かれた形だ。申請の確認、監査の強化とともに、不正が起きにくい風土をつくることも重要だ。