小金井市の保育園廃止条例は無効 「前市長の専決処分は違法」と東京地裁判決 ただ園児の募集再開は不透明
慰謝料も 保護者に寄り添う判決
原告側弁護団によると、専決処分による条例改正を無効にまで踏み込んだ判決は珍しいという。保護者の思いに寄り添った判断となった。
岡田幸人裁判長は、保育園廃止条例の専決処分について「建物の老朽化が進んでいたなどの事情があるとしても、緊急性が客観的に高かったとまでは言えない」と指摘。地方自治法の定める専決処分の要件を満たさないとして違法と判断し、条例改正は無効と結論付けた。原告の母親に対しては「(次男を)兄とともに通園させ復職するという希望が絶たれ、憤りや悲しみにより心を痛めた」と、小金井市に慰謝料の支払いを命じた。
市長「判決内容を精査し対応検討」
判決後、会見予定だった母親は子どもの病気で欠席し、「気持ちが伝わりほっとしている。保育園に行けるよと次男に伝えたら笑顔になった」とメッセージを寄せた。小金井市の白井亨市長は「判決内容を精査し、今後の対応を検討したい」とコメントした。
この問題を巡っては2022年9月、西岡真一郎前市長が市内5園のうち2園を廃園にする条例改正案を市議会に提出。市議会が継続審議としたが、前市長が専決処分で条例を改正。そのため、新規入園の募集を段階的になくしてきた。
専決処分とは
首長が、議会の議決なしに予算や条例を制定する手法。議会を招集するための時間的な余裕がないことが明らかな場合、議会が議決すべきことを議決しない場合、案件が軽微な場合の手段として、地方自治法に定められている。過去には、首長が専決処分を乱発し、問題化した例がある。
定員が改正前に戻っても…すでに保育士削減
両園とも0、1歳児の募集ストップ
2園は「さくら保育園」と「くりのみ保育園」。条例改正を受けて2023年春、両園とも0歳児の園児募集を停止。今春の入園に向けては、0歳児と1歳児の募集を止めている。
判決は、専決処分を違法とした上で、条例改正自体も無効と判断しており、判決が確定すれば、小金井市の条例は改正前の状態に戻る。原告の母親に対する入園不許可処分も取り消されており、市は改正前の状態で、改めて入園を許可するか決定する必要がある。
再度の提出なら、可決の可能性も
ただ、2園は既に廃止を前提にした保育士の体制などを取っており、実際にすぐに募集を再開できるかは分からない。定員を戻した上で、市の裁量で募集を絞ることなども考えられる。
また、小金井市議会は2022年12月、改正された条例を元に戻す条例案を議論が煮詰まっていないなどと反対多数で否決している。廃園に賛同する議員も多く、市が再度、廃園のための条例改正案を提出すれば可決する可能性もある。
【3月5日追記】小金井市は4日、控訴しないと発表した。専決処分を無効とした判決が確定する。市は「判決を重く受け止め、強い思いで控訴しないことと決断いたしました」とする白井亨市長のコメントを発表。入園不許可を取り消し、女性の子どもの入園に向けた手続きを進めると明らかにした。