待機児童が過去最少の2567人に 世田谷・荒川区など急増の自治体も 「隠れ待機児童」は7.1万人と増加傾向

 こども家庭庁は30日、希望しても認可保育所などに入れない待機児童が今年4月1日時点で2567人(前年比113人減)で、過去最少だったと発表した。ピークだった2017年から7年連続で減少し、10分の1以下となった。同庁は「受け皿の拡大が進んだほか、少子化の影響もある」と分析。一方で、保育を希望したのに利用できない「隠れ待機児童数」は増加傾向にあり、柔軟な支援を求める声も上がっている。

87.5%の自治体で「待機ゼロ」

 認可保育所などの利用児童数は、前年比1万2277人減の270万5058人で、3年連続で減少。待機児童は全市区町村の87.5%(前年86.7%)にあたる1524自治体でゼロとなった。

 待機児童数が減少した自治体への調査では、要因として「受け皿の拡大」(49.4%)、「申込者数が見込みを下回った」(24.9%)が多く挙がった。申込者数が見込みを下回った理由としては、「就学前人口が想定以上の減少」とする自治体が76.6%と最多だった。

 2021~2024年度の4年間に整備が必要となる保育の受け皿は、2020年12月時点では14万人と見込まれていたが、今年4月1日時点の見込みは約4.2万人と10万人ほど縮小。同庁担当者は「女性就業率の上昇以上に少子化が進んだ」とみる。

「個々のニーズに合った支援を」

 ただ、政府の発表する待機児童数は、育児休業中の人や、特定の保育園のみ希望している人などを除外した数字。保育を希望したのに利用できない「隠れ待機児童数」は約7.1万人に上り、一昨年の約6.1万人、昨年の約6.6万人から増加傾向にある。

 「保育園を考える親の会」顧問の普光院亜紀さんは、待機児童対策全体に対して「個々のニーズがつかめていないのでは」と危機感を抱く。「それぞれの事情や希望に合わせ、年度途中の入園もでき、1歳過ぎまで育児休業をとることもできるような柔軟な支援を実現してほしい」と指摘。「(育休延長のために)偽りの入園申請をさせたり、待機児童数をディスカウントしたりするような今のやり方を改める必要がある」と話す。

宅地開発や想定外の閉園で急増

 同庁の発表では、待機児童が急増した自治体もある。50人以上の自治体は前年と同じ6自治体だったが、大津市と兵庫県西宮市では急増し100人を超えた。都内でも世田谷区、荒川区が前年から数を増やした。

 同庁による自治体への聞き取りには、「宅地開発が進み、子どもの数が増えた」(大津市)、「想定外の閉園があり、代わりの受け皿確保が間に合わなかった」(西宮市)、「共働き世帯の増加により申込者が増えた」(世田谷区)、「待機児童が2年連続ゼロと入りやすい環境だったため申込者が増えた」(荒川区)など、さまざまな事情が寄せられた。

 同庁の調査に対し、待機児童のいる自治体は、解消できなかった理由として「申込者数の想定以上の増加、または計画していた利用定員数の不足」(46.5%)のほか、「保育人材の確保が困難」「保育需要の地域偏在」を挙げた。同庁は「個々の地域事情に注視が必要」としている。

過疎地域で進む「保育の定員割れ」

 保育の定員数は、前年比6250人減の304万4678人。定員充足率は0.3ポイント減の88.8%で低下傾向が続く。都市部が91.6%と高く、過疎地域は76.2%と低さが目立った。4年間の減少幅は都市部2.9%に対して、過疎地域は6.8%と大きく、同庁は「過疎地域における保育機能確保・強化のためのモデル事業」の実施に向けて来年度の予算要求を行う。

「待機児童数が急増した自治体もある」と説明する加藤鮎子こども政策担当相=東京都千代田区

 普光院さんは「過疎地域の対策として、子育て支援や地域福祉の場として活用されるのは有効だ」と新方針を評価する。充足率に関しては、都市部でも年度の前半はゼロ歳児クラスを中心に空きがあるが、後半には枠が埋まり、預けられない状況が続いているという。