歴史タレント・小説家 小栗さくらさん 父愛読の「幕末小説」を手にして歴史好きに
歴史に関心の高かった両親
両親は、濃厚な「歴史好き」ではありませんが、家族旅行では神社仏閣やその土地の資料館、博物館に立ち寄ることも多く、関心は高かったと思います。
父は鹿児島市の出身。西郷隆盛さんや、その主君の島津斉彬さんが好きで、司馬遼太郎さんの小説「翔(と)ぶが如(ごと)く」を何度も読んでいました。幕末の新選組副長、土方歳三さんを描いた「燃えよ剣」も持っていて、私は中学生の時に、ふと手に取り、読みました。
私の出身地、東京都府中市にある大國魂(おおくにたま)神社など、地元の多摩地域の地名がちりばめられていて、自分と歴史のつながりを感じました。それまで歴史は「自分とは違う時代」という思いがあったのですが、歴史は線でつながっていて、今の私たちがいるんだと。そこから、幕末を入り口に歴史が好きになりました。
ハモっているのは母の影響
今、「さくらゆき」として、歴史をテーマにした歌を、北織さよさんと2人でハモって歌っていますが、音楽が好きな母の影響が大きいです。私が物心ついた頃には子ども部屋に電子オルガンがあり、いつも弾いてくれました。母は時々、自分の歌う歌に合わせて、子どもたちに「ハモって」と言っていました。元々ハモらない歌でも「ハモって」と。小学生の頃から、ハモることが身近で、その楽しさも知りました。どんな歌でも、なんとなく感覚でハモれます。
大学に入る時に、声を生かした声優の仕事など、芸能の道に行きたいということは家族に言っていました。でも、母親には反対されました。心配なので何か資格を取らないと、承諾できないと。それなら歴史だと思い、大学で学芸員の資格を取りました。
「弔い」の思いで歴史小説
いろいろやっていく中で、好きな歴史、歌や声も生かしたいと考え、歴史を歌うことに行き着きました。今は歴史上の人物を調べ、気持ちを想像して歌っています。作詞で大事にしているのは、その人物側から見た世界を描くこと。歴史小説も同じような思いで書いていて、お墓参りをするような「弔い」の気持ちを持ちながら描いてます。
2歳上の姉はいつも、私の史跡巡りに付き合ってくれます。普通に2万歩とか歩いてしまうので、「もう少し歩かない所がいい」と言われ、反省しています。母も行くことがあり、滝山城(東京都八王子市)は一緒に登ってくれました。母は数年前まで、この世界でやっていけるか心配していたようですが、本(「余烈」)を出したことで、安心してくれたみたいです。
小栗さくら(おぐり・さくら)
東京都府中市出身。2006年から、歴史をテーマに歌うツインボーカルユニット「さくらゆき」の1人として活動。作詞、作曲を手掛け、歴史関連の講演や執筆もこなすなど活動の幅は広い。4月には、幕末を生きた人を描いた短編集「余烈」(講談社)を発表。現在、徳川家康をテーマにした短編小説を執筆中。
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