家事アドバイザー 山﨑美津江さん 育った環境を反面教師に「帰りたくなる」家づくり

河郷丈史 (2022年10月23日付 東京新聞朝刊)
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家族の思い出を語る家事アドバイザーの山﨑美津江さん(須藤英治撮影)

カット・家族のこと話そう

落ち着けない家の中 小4で父が倒産

 東京の上野と鶯谷の間にある、台東区の入谷という庶民の街で戦後まもなく生まれました。父は、万年筆など文具関係の卸問屋を営む商売人。母は高等女学校を出た後に商工省(現在の経済産業省)に勤め、父と結婚してからは夫婦で商売を切り盛りしていました。

 父は前の奥さんを亡くしていて、母は再婚相手。私の13歳上の姉は、前の奥さんとの間にできた子どもで、母とはなかなかうまくいっていないと子ども心に感じていました。家の中は東南アジアへの出荷の準備とか、いつも商売のことで慌ただしくて、きちんと片付けられてもいない乱雑な環境。落ち着ける雰囲気ではありませんでした。

 当時は、文具の素材がセルロイドからプラスチックへと移り変わっていく時代。でも、父はセルロイドにいつまでもこだわっていたため、商売に失敗し、私が小学4年の時に倒産したんです。兄の自転車とか、お金になるものはみんな債権者に持って行かれて、家も失って荒川区に引っ越すことに。多感な年頃の子どもにとっては大きなストレスでした。

どの洗剤? 夫の科学的解説で夢中に

 高校生の時、東京大の学生が教えてくれる講座を聴きに行ったのをきっかけに、自分も大学に行きたいと思いました。明治生まれの父は「女は大学に行くことはない」という考えでしたが、母は賛成してくれました。女には学問がないといけないと。商工省で勤務していた頃、立派な大学を出たキャリア官僚たちと、自分のようなノンキャリの扱われ方の違いを目の当たりにしたからじゃないでしょうか。

 大学の下宿先で出会った夫と学生結婚。夫の転勤で静岡に引っ越して子育てを始めた頃、近所の女性の紹介で雑誌「婦人之友」を知り、読者の会「友の会」にも入りました。それまで、私は家事も料理もほとんどできませんでしたが、友の会の仲間から掃除の仕方を教わったり、家計簿を付けたり。面白くなって、一生懸命勉強しました。

 それは、自分が育った場所が雰囲気の良い家庭ではなかったからでしょうね。家はやっぱり「帰りたい」と思える雰囲気が大事。実家を反面教師にして、まるで枯れた田んぼが水を吸い込むように、どんどん知識を吸収しました。だから子育てって、あまり先回りをして環境を整えすぎるのも良くないと思います。

 私が家事にのめり込めたのは、夫のおかげでもあります。夫は理系で物理や化学に強く、どの洗剤を使えば落ちるとか、科学的に教えてくれます。理由が分かると面白くて、没入できる。そんなきっかけを、夫が与えてくれたと思いますね。

山﨑美津江(やまさき・みつえ)

 1948年、東京生まれ。長女を出産後に「友の会」に入会し、整理整頓や掃除の技術を磨く。NHKの番組「あさイチ」などで「スーパー主婦」として活躍するほか、自宅を公開しての家事アドバイスにも取り組む。近著は「帰りたくなる家-家の整理は心の整理」(婦人之友社)。

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  • 神楽坂セイラ says:

    熟々、納得の文章です。とっくに子育ても終わってしまい、個人的には手遅れですが、子供達が、結婚(するのか全く分かりませんが…)するようなら、是非、伝えたいと思いました。素敵なお話を有難うございました。

    神楽坂セイラ 女性 60代
  • トトロ says:

    私の母はキレイ好きでしたが、田舎なので玄関の棚に色んな物が置いてあるのが苦手で、私は棚の上には物は置きません。笑い

    家の中が片付いてる事もですが、人一倍子供思いの両親に育てられた事で、人に優しくなれると幸せも訪れると思います。

    感謝を込めて、毎日仏壇にお線香を上げてます。

    トトロ 女性 60代

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