タレント 青木さやかさん 本当に嫌いだった母と、亡くなる前の3カ月で仲直りできました

吉田瑠里 (2022年7月24日付 東京新聞朝刊)
写真

青木さやかさん(ワタナベエンターテインメント提供)

家族のこと話そう

褒めない母 何よりも世間体

 両親は小中学校の教師でした。子どもの頃は「青木先生の娘さん」と声を掛けられることが多かったです。母は「きれいな人」とも言われて私の自慢でしたが、私は母に褒められませんでした。90点のテストを見せると「何であと10点取れないの?」。ピアノ発表会の曲が「エリーゼのために」に決まると「去年、同級生が弾いていたでしょ」と言われるだけでした。

 その両親が離婚したのは高校生の時。私と3つ下の弟は母と暮らしました。でも私は「母は何よりも世間体を気にしていたのに離婚なんて恥ずかしいことをして、今まで言ってきたことと違う」と嫌悪感が湧いて。友達の家に転がり込んだり夜中に帰ったり、母と接しないようにしました。

 26歳で上京し、一旗揚げたいと思う半面、離れて暮らしたら、出産したら、母に感謝できるかもという気持ちもありました。芸能界の仕事が増えてからは、母にお金やプレゼントを送り、親孝行だと思っていました。でも、2010年に娘が生まれ、会いに来た母が抱いた時、私の大事なものに触らないでと思ったんです。本当に嫌なんだと思ってしまいました。

末期がん…友人の助言で決意

 そんな母が3年前、末期がんで愛知県のホスピスに入院しました。当時、私は肺がんの手術後で再発が怖く、パニック症でもありました。友人に「親と仲良くすると自分が楽になる」と言われ、母と仲直りしようと思い立ちました。それから亡くなるまでの3カ月ほど、どんなに大変でも東京から毎週通いました。

 その日の目標を決めて行き、初めの頃、母に「今までいい子でなくてごめんなさい」と謝ると、母は「そんなことない、さやかは優しいでしょう」と言いました。母の手を握ったり、マッサージをしたり。ホスピスで朝7時に「早く起きなさい、みっともない」と言われたことも。いつもきれいに整理整頓していて、私のだらしなさは目に余ったんだろうなとか、母という人がよく分かった時間でした。

今では大きな味方だと思える

 娘の85点のテストを持って行くと、母は相変わらず「100点取れなかったんだね」と褒めません。前なら「はいはい」と投げやりになりましたが、「85点でもすごいじゃん」などと返し方を変えてみました。そうしたことを重ねながら母と向き合って亡くなった時、もう嫌いという感情はありませんでした。

 今は車の中に母の写真があり、悩みを聞いてもらっています。大きな味方だと思えるようになったんです。私の死んだ後、娘には笑って楽しく過ごしてほしい。きっと母も同じはず。私は「死んでもできる親孝行」として、不満を持たずに楽しく生きていこうと思います。

青木さやか(あおき・さやか)

 1973年、愛知県生まれ。名古屋学院大卒業後、フリーアナウンサーとして活動し、2003年に「どこ見てんのよ!」のギャグで人気に。近年は演劇にも多数出演。昨年、母との確執などをつづったエッセー「母」(中央公論新社)を出版。今年4月には「厄介なオンナ」(大和書房)を刊行した。

5

なるほど!

27

グッときた

7

もやもや...

17

もっと
知りたい

すくすくボイス

  • 猫の手 says:

    青木さやかさんすごいな
    私はまだ仲良く出来ません
    母がもし病で倒れた時に自分がどういう気持ちになるかも想像出来ません
    倒れたとて会いたくない私が倒れたとしてもどうせ「日頃の行いが悪いからあんたが良い子じゃないから罰が当たった」と言うでしょうそれが口癖だったから
    口を開けば誰かの悪口あれこれ嫌で仕方ないと愚痴愚痴
    私も母もネガティブになるばかりなのでまだまだ会いたくありません
    私は青木さやかさんのようになれますかね

    猫の手 女性 40代
  • まりも says:

    私も母に褒められた事もなくずっと仲が悪く今でも喧嘩が絶えません。初期の認知症になり私はずっと同居なので面倒をみてます。しかし全く感謝の気持ちもなく何かある事に殺してやると包丁を突き付けてきます。
    それでも私を産んでくれた人と思い認知症には刺激が必要かと思い旅行に連れて行ったり花を見せに連れて行ったりしています。知り合いにお嬢さんに色々連れて行ってもらって良いわね。と言われると当たり前でしょ。育ててやったんだから。と言って私の悪口をずっと言ってます。
    お嬢さんだからわがまま言えるのよ。って言われると熨斗付けてやるよ。こんな娘と言います。
    心折れそうな日が有りますが今は仕事が有るので仕事の時は忘れる事が出来ます。
    殺意も持った事も有ります。事件に良くなってますが気持ち凄く分かります。
    私はこの母の為に人生棒に振る事したくないと思ってとどまってます。
    死ぬ前に青木さやかさんの様に仲直りできるのかな?と思います。

    今も認知症のリハビリに来ています。この 3年間休みは母の為に自分の休みは無しです。
    妹はアメリカなので私が1人で母をみなくてはいけません。
    終わりは有りますがいつまでこの生活が続くのかと思うとしんどい時が有ります。
    性格は直らないので諦めですね。
    死ぬ 3分前に貴女が良くしてくれたって思うよ。と知り合いに言われました(笑) 3分前でも分かってくれたら良いかと思ってます。
    ここには書けない事色々有りますが
    私しか居ないので最後まで面倒みます。

    まりも 女性 50代

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