寝ない0歳児にキレて壁に穴… 専業主夫になってわかった孤独な家事育児のつらさ 「主夫ラボ」代表の思い
「おれは完璧」が6カ月で打ちのめされ
こうした活動を自ら「主夫ラボ」と呼び「家庭円満のきっかけになるようなサポートをしたい」と意気込む。
2013年の結婚当時、妻の静さん(39)は病院勤めの助産師で、昼夜問わず働いていた。しばらくして母と営んでいたカフェを閉めた後、家庭を支えようと主夫の道を選び、静さんに家事育児をみっちり仕込まれた。「おれは完璧」と思ったが、長女が生まれてみると何もかもが思い通りにいかなかった。
打ちのめされたのは、生後半年のころ。静さんが夜勤で不在の日、いくらあやしても寝ないで泣き続ける娘に「ぷつっと何かが切れた」。娘を2階の窓から放り出してしまいたい衝動を抑えて、いすを壁に投げつけた。
「虐待や自殺はひとごとじゃない」実感
穴のあいた壁の前で静さんに電話した。「助けて」。それまでにも夜泣きで眠れない日が続いていた。「睡眠不足に精神をむしばまれていた。虐待や自殺はひとごとじゃないと実感した」
家事や育児は仕事に比べて軽く見られがちだ。「このつらさを知っている男性が世の中にどれほどいるのか。もしパートナーがこのつらさを理解してくれなかったら、どれだけ孤独か」。家庭円満への第一歩として、男性に家事育児の実態を伝えていこうと決意。パパさんサークルなどの活動を経て、主夫ラボを始めた。
講座に来ない「関心の薄い男性」にこそ
講座では、男性目線を意識する。「母子手帳は『冒険の書』のようなもの」などと家事、育児をゲームや漫画に例えて説明。講座のチラシも人気ゲーム風にデザインするなど工夫を凝らす。東京青年会議所板橋区委員会からの依頼で、家事育児の分担を考えるカードゲーム「カジークジー」の開発にも携わった。
だが講座に参加する男性は意識の高い人が多く「関心の薄い男性にこそ、聞いてもらいたい」。活動の幅を広げるため、今後は企業を回って「パパ塾」などの研修を行っていくつもりだ。
「国は男性の育児休業取得を推進しているが、やるべきことが分かっていないと、ただ休んで終わりになってしまう。男性育休に積極的な企業には、ぜひ研修を取り入れてほしい」
高木駿(たかぎ・しゅん)
1984年、渋谷区生まれ。都立昭和高校卒。6歳と3歳の2児の父。2010~15年、立川市でカフェ「こもれび家」を母と経営。閉店後は主夫に。2020年、昭島市中神町で産後ケアに特化した助産院「こもれび家」を夫婦で開設。主夫ラボの講演、相談などの問い合わせは高木さんの電話=090(6127)7485=で受け付けている。
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