寝ない0歳児にキレて壁に穴… 専業主夫になってわかった孤独な家事育児のつらさ 「主夫ラボ」代表の思い

林朋実 (2021年11月8日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
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議論を可視化するグラフィックレコーダー八代正樹さんの資料を見せる高木さん=昭島市で

 男性に家事育児を伝える「主夫ラボ」代表・高木駿さん(37)=昭島市=は、専業主夫として、家事に育児に試行錯誤し、家庭で中心的役割を担う世の多くの女性の大変さを身をもって知った。その経験を踏まえて2018年から、講演活動や男性の家庭でのスキルアップ講座、悩み相談などに取り組んでいる。

「おれは完璧」が6カ月で打ちのめされ

 こうした活動を自ら「主夫ラボ」と呼び「家庭円満のきっかけになるようなサポートをしたい」と意気込む。

 2013年の結婚当時、妻の静さん(39)は病院勤めの助産師で、昼夜問わず働いていた。しばらくして母と営んでいたカフェを閉めた後、家庭を支えようと主夫の道を選び、静さんに家事育児をみっちり仕込まれた。「おれは完璧」と思ったが、長女が生まれてみると何もかもが思い通りにいかなかった。

 打ちのめされたのは、生後半年のころ。静さんが夜勤で不在の日、いくらあやしても寝ないで泣き続ける娘に「ぷつっと何かが切れた」。娘を2階の窓から放り出してしまいたい衝動を抑えて、いすを壁に投げつけた。

「虐待や自殺はひとごとじゃない」実感

 穴のあいた壁の前で静さんに電話した。「助けて」。それまでにも夜泣きで眠れない日が続いていた。「睡眠不足に精神をむしばまれていた。虐待や自殺はひとごとじゃないと実感した」

 家事や育児は仕事に比べて軽く見られがちだ。「このつらさを知っている男性が世の中にどれほどいるのか。もしパートナーがこのつらさを理解してくれなかったら、どれだけ孤独か」。家庭円満への第一歩として、男性に家事育児の実態を伝えていこうと決意。パパさんサークルなどの活動を経て、主夫ラボを始めた。

講座に来ない「関心の薄い男性」にこそ 

 講座では、男性目線を意識する。「母子手帳は『冒険の書』のようなもの」などと家事、育児をゲームや漫画に例えて説明。講座のチラシも人気ゲーム風にデザインするなど工夫を凝らす。東京青年会議所板橋区委員会からの依頼で、家事育児の分担を考えるカードゲーム「カジークジー」の開発にも携わった。

 だが講座に参加する男性は意識の高い人が多く「関心の薄い男性にこそ、聞いてもらいたい」。活動の幅を広げるため、今後は企業を回って「パパ塾」などの研修を行っていくつもりだ。

 「国は男性の育児休業取得を推進しているが、やるべきことが分かっていないと、ただ休んで終わりになってしまう。男性育休に積極的な企業には、ぜひ研修を取り入れてほしい」

高木駿(たかぎ・しゅん)

 1984年、渋谷区生まれ。都立昭和高校卒。6歳と3歳の2児の父。2010~15年、立川市でカフェ「こもれび家」を母と経営。閉店後は主夫に。2020年、昭島市中神町で産後ケアに特化した助産院「こもれび家」を夫婦で開設。主夫ラボの講演、相談などの問い合わせは高木さんの電話=090(6127)7485=で受け付けている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年11月8日

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