子ども10万円給付のクーポン5万円、何に使えるかは自治体で差があります 「全額現金」の市も

坂田奈央、桐山純平 ( 2021年12月3日付 東京新聞朝刊)

 政府が経済対策として実施する18歳以下への10万円相当の給付を巡り、クーポン部分(5万円相当)で購入できるサービスや商品は、利用者が住む自治体によって異なる。国はクーポンの使い道を子育て目的に限定するが、具体的な使途は各自治体が自ら決める制度となっているためだ。利用者の間で使途に不公平感が生じる懸念に加え、現金一括に比べ支給事務も大変で、10万円全てを現金給付で行う予定の自治体もある。

クーポン制度 詳細はこれから決定

 現金とクーポン配布は11月26日に閣議決定された2021年度補正予算案に入った。クーポン部分について、政府は「子育てに係る商品やサービスに利用できる」「自治体の実情に応じて現金給付も可能」と説明するが、制度の詳細を決めるのはこれからだ。

 政府は6日からの臨時国会で審議される補正予算案の成立後、クーポンの支給要綱をまとめる。家事支援などが受けられる東京都の出産応援事業や、大阪市の塾代助成事業などを参考事例として挙げる。

「子育て関連」線引きは自治体任せ

 最終的なクーポンの使途は、政府からの支給要綱の通知を受けた自治体自らが決める。「子育て関連」として使用可能かどうかという線引きも自治体の判断に委ねられる。このため、近隣の市区町村であっても、利用可能なサービス、施設、店などで差が生じる可能性は大きい。

 各自治体でクーポンの使途に差が出ることについて、ある野党議員は「ある町ではランドセルが購入できるのに、その隣町で購入できないなら不公平ではないか」と批判。内閣官房の担当者は「(不公平になるという)指摘があるのは承知しているが、(子育てなどの)サービスを充実させるきっかけにもなる」などとして、クーポンの利点を挙げる。

事務費用は現金一括より967億円増

 この事業では別の問題も生じている。給付方法を現金とクーポンに分けたことで、現金一括の場合と比べ967億円余計に事務費用がかかる。クーポンを受け取った店が換金したり、使用できる店やサービスを周知したりする必要があるためだ。静岡県島田市は「現金給付を望む子育て層の声が多く、コロナ禍でのクーポン受け渡し時の負担にも配慮した」として、10万円全てを現金で給付する方針をすでに発表。こうした動きを、内閣官房の担当者は「要綱を見てから決めてほしい」と牽制(けんせい)する。

 ニッセイ基礎研究所の久我尚子氏は「施策の目的があいまいで、自治体や国民の理解が得づらくなっている」と指摘。その上で「政府は給付の本来目的を丁寧に説明する必要がある」と訴える。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年12月3日