産廃施設跡地が豊かな森に生まれ変わった 所沢市の「おおたかの森トラスト」足立圭子さんに緑綬褒章
雑木林の保全 ボランティアの力で
「豊かな自然の近くで子育てしたい」と所沢市に移り住んだ足立さん。所沢、三芳町などの一帯には武蔵野の雑木林(平地林)が各地に残っていた。その豊かな自然が開発で次々に失われていくことに危機感を抱いた。これらの平地林を「おおたかの森」と名付け、1994年6月、母親仲間を中心に10人で設立した。
募金で土地を買い取ったり、借りたりした平地林を、幼稚園児や小中学生も含むボランティアの力で手入れし、再生する活動を続けてきた。
これまでに募金で購入した土地は8カ所、計約1.4ヘクタール。所有者と保全協定を結んで借りている土地は11カ所、計約7.4ヘクタールに及ぶ。この間、足立さんはトレードマークのかっぽう着姿で市、県、国に平地林の保護を求めて駆け回った。2002年11月、参議院環境委員会の自然再生推進法の法案審議に参考人として呼ばれた際も、自然再生の枠組みへの市民参加の重要性をかっぽう着姿で訴えた。
14年かけてフクロウ、オオタカも
「新住民のくせに」「人間とオオタカと、どっちが大事だ」との陰口に悔しい思いもした。そんなとき「足立さん、出過ぎた杭(くい)は打たれないよ」「困ったら、いつでも相談に来て」と、応援してくれる人たちの声が支えになったという。
団体の森の再生の成果がひと目で分かる場所がある。所沢市北岩岡の産廃施設跡地だ。2008年、寄付を原資に約7400平方メートルを取得。地面のコンクリートをはがし、敷地内の「赤土山」からリヤカーや一輪車で土を運んでガラ(かけら)の上にかぶせ、苗木を植えた。外来種の草の除去などの手入れと「鳥が運んできた種」で14年後、もともとあった自然としか思えない森に生まれ変わった。
水辺も造られ、フクロウ、オオタカも訪れる森に立った足立さんは「平地林が残るかどうかは、市民が関心を持ってくれるかどうかで決まる。壁があったら、喜んで乗り越えればいい」と語った。