〈えほん〉「きょうりゅうバスでがっこうへ」文・リウ・スーユエン 絵・リン・シャオペイ 訳・石田稔

(2023年1月13日付 東京新聞朝刊)

(長壁綾子撮影)

 スパック小学校の子どもたちは、学校が大好き。寝坊する子や、ずる休みをする子はいないよ。だって、学校のバスは、きょうりゅうくんだから。

 きょうりゅうバスで学校へ行くのは、とっても楽しい。ガソリンも必要ないし、排気ガスも吐き出さない。大通りにはきょうりゅう専用道路も。子どもたちも先生もきょうりゅうくんが大好き。でも、時々やっかいなことが起きてしまう。

 台湾で大人気の「きょうりゅうバス」シリーズの第2弾。子どもたちと恐竜の交流に心温まる。表紙カバーの裏で各国の通学文化も紹介。

 1430円。世界文化社=03(3262)5115。

リン・シャオペイさんのワークショップを取材しました!

 「きょうりゅうバスでがっこうへ」の刊行に合わせて来日したリン・シャオペイさんの記念イベントを訪ねました。イベントは昨年11月5日に東京都千代田区のカフェ併設の書店「ブックハウスカフェ」で開催され、リンさんによる台湾の話や絵本の読み聞かせ、ワークショップなど盛りだくさんの内容でした。

絵本の読み聞かせをするリン・シャオペイさん

台湾の風を日本の子どもたちに

 ワークショップ「あったらいいな!こんな学校/園の行き方」では、子どもたちが画用紙に思い思いに絵を描きました。「保育園がそのままバスになる」、サルや遊具、布団に乗って学校に行くといったユーモアあふれる通園・通学方法に、リンさんは「みんなの想像力が素晴らしい。説明もとても上手」と拍手を送りました。

 参加者からリンさんへ、たくさんの質問も出ました。小学生の女の子に「絵本作家になりたい。どうやったらなれるの?」と聞かれたリンさんは、「絵本の絵を観察してみて。登場する子犬が何を食べて、どう動くかなどをよく観察するといいですよ」とアドバイス。「絵をキレイに描くにはどうしたらいいの?」という問いには、「練習して、時には外に遊びに行こう。たくさんの木を見ると、その木が一本ずつ違うことに気がつくから、それを色鉛筆やクレヨンや絵の具で描いてみよう」と答えました。

ライブペイティングできょうりゅうくんと子どもたちを描くリン・シャオペイさん

 「きょうりゅうバス」シリーズについては、「文章を読んだときに、絵を描きたいと思った。絵本では子どもたちがきょうりゅうくんのお手伝いをする。動物と人間が助け合っている姿がとてもいい」と絵本へ込めた思いも話してくれました。

 私もリンさんが描く、きょうりゅうくんや子どもたちの愛らしくやさしいイラストに魅了された一人です。リンさんが好きな日本の絵本作家は、堀内誠一さんと安西水丸さん、荒井良二さんの3人だそうです。豊かな彩り、シンプルながら誰が描いたか一目瞭然の絵は、リンさんの作品にも通ずるものがあると感じました。イベントは、リンさんも子どもたちも終始笑顔でした。コロナ禍を経てやっと来日することができたリンさんから、子どもたちは台湾の風を受け取ることができたのではないかと思います。