吉祥寺に移転「クレヨンハウス」12月18日オープン 主宰の落合恵子さん「母との思い出の場所にお返ししたい」

花井勝規 (2022年12月16日付 東京新聞朝刊)
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クレヨンハウスが入居する商業ビル。1階と2階が売り場となる=武蔵野市で

 ビルの老朽化により先月、表参道での46年に及ぶ営業を終えた子どもの本の専門店「クレヨンハウス」が武蔵野市に引っ越した。新店舗はJR吉祥寺駅近くの大正通り沿いにある商業ビル。プレオープンを17日、グランドオープンを18日に控え、内装工事が急ピッチで進んでいる。同店を主宰する作家の落合恵子さん(77)に移転先に吉祥寺を選んだ理由などを聞いた。
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「クレヨンハウス」を主宰する作家の落合恵子さん

私と母を包んでくれた井の頭公園

-旧店と比べ、商品構成は変わりませんか。

 「売り場面積は2割ほど小さく、やや手狭になりますが、1階が有機野菜売り場やレストラン、オーガニック化粧品など、2階が子どもの本や女性の本などの書店と玩具売り場です。これまでは『専門書店のスタンダード』をずっと続けてきて、入門編を大事にしてきました。新店では、次のステップも用意したい。作家別のコーナーをなるべく増やし、セレクト色を出そうと考えています」

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開店に向け大急ぎで本を並べるスタッフ=いずれも武蔵野市で

-なぜ吉祥寺を移転先に。

 「小さいころ、中野に住んでいたので母と一緒に週末は井の頭公園に遊びに来ていました。木陰で母の作ってくれた弁当を食べながら絵本を開いた。終戦後の物資の乏しい時代でも、傍らにはいつも本があった。井の頭公園は小さい自分を包容してくれた思い出のあふれた場所で、吉祥寺にお返ししたいという気持ちからです」

近くで有機農業 来春にも方向性

-吉祥寺での新たな構想は。

 「有機農業をやりたいです。有機農業をされている農家に協力いただき、できれば都内で、ここからそれほど遠くない場所に畑を確保したい。来春にも方向性を出すつもりですが、耕作できるようになるには時間がかかるかも。生産者は野菜や果物の作家です。私たちの体は私たちの食べたものでできている。オーガニックは通常のものより値が張りますが消費者が増えれば値段は下がる。『生産性、効率性こそすべて』という流れに『本当にそうですか』という問いかけを吉祥寺から発信したい」

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窓にはクレヨンハウスのキャラクター「クーヨン」が登場

気軽に「座り読み」してください

-最後に、まもなくクリスマス。子どもたちにお薦めの絵本を教えてください。

 「『スノーマン』の幻想的な絵本とはまた違った、ユーモアあふれるサンタクロース像が登場する『さむがりやのサンタ』(作・絵レイモンド・ブリッグズ 訳・すがはらひろくに 福音館書店)や、『急行「北極号」』(絵・文 C. V. オールズバーグ 訳・村上春樹 あすなろ書房)、『ビロードのうさぎ』(原作マージェリィ・W・ビアンコ、絵と抄訳・酒井駒子 ブロンズ新社)がお薦めです。

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たくさん並んだクリスマス向けの絵本

 1人の女の子がニューヨーク・サン新聞に送った手紙から生まれた1冊『サンタクロースっているんでしょうか?』(中村妙子訳、絵・東逸子 偕成社)もいいですね。ほかにもたくさんあるのでクレヨンハウスに気軽に遊びに来て、座り読みをして、お気に入りの1冊と出会ってください。選ぶのは、あなた、です」

クレヨンハウスの住所は武蔵野市吉祥寺本町2の15の6。吉祥寺駅から北西に徒歩6分ほど。営業時間は1階が午前11時~午後9時、2階は同~午後7時(25日までは午後8時まで営業)。来年1月1、2日は休業、12月31日、1月3日は午後6時までの短縮営業。電話0422(27)2114。

落合恵子(おちあい・けいこ)

 1945年、栃木県生まれ。明治大卒。文化放送のパーソナリティーを務めた後、作家に。近著に「偶然の家族」(東京新聞)、「わたしたち」(河出書房新社)などがある。「悲しみのゴリラ」(クレヨンハウス)など多くの絵本の翻訳も手がける。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年12月16日

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