北海道地震支援の液体ミルク、使用わずか1人 8月に解禁されたのに…自治体が「キケン!飲むな!!」

(2018年10月23日付 東京新聞夕刊)
 西日本豪雨や北海道地震を通じ、被災地で救援物資の乳児用液体ミルクが活用されない事例が相次いでいる。国は今年8月に液体ミルクの製造・販売を解禁したが、まだ国産品はなく、自治体、住民に存在の周知が進んでいないのが原因。災害時の新たな必需品になり得るが、定着は程遠い状況で、関係者からは国が啓発に乗り出すべきだとの声も上がる。

見慣れない外国語の紙パック「何だろう」

 「これは何だろう」

 震度6強を観測した北海道安平(あびら)町。地震発生から5日後の9月11日夜、田中一省(かずみ)総務課長は、見慣れない外国語が書かれた紙パックを見つけた。中身は、東京都が送ったフィンランド製の液体ミルクだった。当初は説明書が見当たらず、やむなく「キケン 飲むな」と書いた紙を張り、倉庫に保管。田中課長は「多くの物資が届く中、どう使うかすぐには判断しかねた」と振り返る。

張り紙がされた液体ミルク=9月23日、北海道安平町で

北海道からの要請で東京都が1050本送る

 液体ミルクは2016年の熊本地震の際、被災地で使われたのを機に注目を集めた。本来は日用品だが、東京都は「災害時に有用」として今年6月、流通大手イオンと調達に関する協定を締結した。北海道の地震では、道からの要請で計1050本を送った。道は厚真(あつま)、安平、日高、平取(びらとり)、むかわの5町に配布した。

 しかし、道は被災地の5町の保健所に「日本では使用例がなく、衛生管理が難しい」と通知。うち2町への通知に、住民に飲ませないよう指示する内容が誤って含まれるミスが起きた。道地域保健課は「国産品は流通していないという意味だった」と説明する。

専門家「国が安全性や使用法を発信すべき」

 被災自治体の大半は、非常用電源などで湯を沸かして粉ミルクで対応。液体ミルクが提供されたのは厚真町の1人のみだった。被災自治体からは「液体ミルクはなじみが薄かった」(日高町)、「国が使い方を周知してほしい」(むかわ町)との声が漏れる。

 西日本豪雨でも、都から愛媛県と岡山県倉敷市に計2640本の液体ミルクが提供されたが、使用はごく一部にとどまった。

 厚生労働省が災害時に関係自治体に通知する母子への「支援のポイント」には、液体ミルクに関する説明はない。液体ミルクの普及に賛同する「さくらが丘小児科クリニック」(東京都世田谷区)の森戸やすみ医師は「行政の知識不足がうかがえる。国が安全性や使用法を発信すべきだ」と訴える。

乳児用液体ミルク

 粉ミルクのように湯に溶かす手間はなく、哺乳瓶も不要。欧米では広く普及している。東京都が調達したフィンランド製の賞味期限は5カ月。解禁を望む署名運動が広がり、厚労省は今年8月、製造・販売を認める改正省令を施行した。日本乳業協会によると、国産の商品化には早くても1、2年かかる。