公園の遊具はどうあるべき? 危険だけでなく利点に目を 運動能力も社会性も育まれる
識者2人に聞きました
東京23区内で過去7年間に遊具が減った公園が414カ所、遊具が小さくなった公園が56カ所あること、限られたスペースの中で各自治体が悩んでいることを8月8日付の東京新聞朝刊で報じた。公園遊具はどうあるべきか。その現状や役割について、識者2人に聞いた。
小さなけがで、身を守る方法を学ぶ
◇プレイグラウンド・セーフティ・ネットワーク代表・大坪龍太氏
危険を避けるという世の中の流れや公園遊具にかけられる予算の減少で、遊具は間違いなく減っている。自治体としては遊具の事故を避けたいという心理も働いているだろう。
死亡や重傷につながるリスクはあってはならないが、子どもは転んだり、落ちてこぶを作ったりする体験から自分の限界を知り、次のチャレンジにつなげていく。小さなけがを経験することで、大きな危険から身を守る方法も学ぶ。
何かあると管理者が悪い、メーカーが悪いという方向に行ってしまいがちだが、設置者、管理者、保護者が遊具の危険だけでなく利点にも目を向け、多少のけがについては寛容にならないと、子どもの成長機会も奪われてしまう。
子どもの発達の観点からは遊具の減少は憂慮すべきこと。重箱の隅をつついて「遊具は置かない方がいいね」という方向に行ってしまうのは一番危険だ。
成功と失敗の積み重ねが知的発達に
◇早稲田大学人間科学学術院・前橋明教授
昔は木登りや枝にぶら下がるなど恵まれた自然環境の中で体力や運動能力を伸ばすことができたが、それがかなわぬ中、固定遊具で遊ぶことが子どもたちの筋力や呼吸・循環機能を高めたり、身体の各部の成長を促進したりすることに役立っている。
例えば、滑り台はスピードを体感したり、姿勢を保って滑り降りたりすることで、足や腰周りの筋力が鍛えられるし、ブランコは重心を移動させながらこぐため、腕と脚、腰を連動させる力が備わる。
ジャングルジムは昇り降りだけでなく、「はう」「くぐる」「まわる」といった3次元的な動きの中で片手片足を順に離しながら進むため、身体認識力やバランス感覚が養われる。頭や背中を打たないように工夫することで空間認知能力も育まれる。
複数の子で遊ぶ際に遊具の順番を待つことなどで、社会性も育まれる。ただ遊んでいるだけに見えても、遊具はさまざまな力を伸ばすことにつながっている。
公園のように無料で誰もが使える場で、ワクワクする体験ができることが重要だ。それによって、子どもはあそびを発展させ、成長につなげることができる。遊具により成功や失敗の経験を積み重ねることは知的発達にも効果がある。