自閉症の子どもの絵画「言葉を越えて展」流山で11月30日まで アートで感じる「共生」

林容史 (2023年11月28日付 東京新聞朝刊)

構図や色づかいが個性的な作品が並ぶ展覧会=流山市で

 自閉症の子どもや若者が創作した絵画作品を紹介する「言葉を越えて展」が、流山市の「流山おおたかの森S・C FLAPSイベントスペース」で開かれている。50号の巨大な水彩画作品を中心に約80点を展示、視点や構図、色づかいに個性を発揮した力作が並ぶ。25日には、出品者と市内の子どもたちを交えたワークショップがあり、約30人が惑星をイメージした球体の作品を作り上げた。11月30日まで。

「言葉はなくても、絵が表現の場に」

 「Autistic or Artistic ?(自閉症か、アートか?)」を問いかけ、自閉症の当事者の創作活動を支援しているAOAart(エーオーエーアート、東京都千代田区)の主催。

 開かれた公共の場で作品を発表することで、自閉症のクリエーターたちが社会とのつながりを再確認し、市民に「自閉症スペクトラム」という個性を広く知ってもらうのが目的。2014年に初めて開催し、原則2年ごとに実施。今回で5回目。

 小中学生を中心に、市内で毎月、AOAartが開いているワークショップに参加している会員約20人が、この2年間で描きためた作品を出展した。展覧会を鑑賞したことをきっかけに小学6年から創作を始めた市内の小野恭佑さん(20)は、今回も点描を中心とした作品を発表した。母親の美紀さんは「気に入ったものだけ、自由に描いている。言葉はないが、作品をほめられると得意げな表情を見せる。絵が表現の場になっている」と話す。

みんなで体を使ってワークショップ

 25日のワークショップでは、会員と事前に申し込んだ中学生、飛び入りの子どもたちが参加。直径約2メートルのビニール製の球体2個をキャンバスに、筆や素手で絵の具を塗りたくり、独創的な惑星に仕上げた。子どもたちは全身、絵の具まみれになりながら、協力して色を重ねていった。

ワークショップで素手や筆で惑星に色を塗る子どもたち

 ワークショップに参加した流山市立南部中学校2年で美術部長の只野友梨さん(14)は「体を使って創作して心が楽しくなった。自閉症について『自分とはちょっと違うのかな』と思っていたが、アートを楽しむ気持ちは同じ。心を伝える作品に圧倒された」と笑顔を見せた。

 AOAart代表理事の日本画家藤島大千さんは「自閉症の人たちと共に社会で生きていることを頭で理解するのではなく、アートを通して感覚で実感してほしい。既成概念にとらわれない、自由な発想の作品を体験して」と呼びかけている。入場無料。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年11月28日