川崎で「発達障害がある人も安心できる交流の場」運営 自閉症の長男を育てる父の思いは

石川修巳 (2020年10月13日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 自閉症など発達障害がある当事者は、初めての場所や公共施設が苦手なことが多い。だから安心して過ごせる、また訪れたくなる交流の場を自分たちでつくろうと、川崎市中原区のNPO法人が、築50年の空き家をリフォームした。理事長自らも自閉症の長男を育てる父子家庭で、そんな居場所を求めてきた一人だった。

出会い、つながり、認め合うきっかけづくりを 

 交流の場をつくったのは、NPO法人「くるみ-来未」。その名称に「明るい未来はきっと来る!」との希望を託し、みんなが自分らしく生きられる社会にするのが目標という。

 理事長の太田修嗣さん(44)の本業は会社員。海外赴任中、当時3歳の長男が自閉症の診断を受けた。成長とともに多くのトラブルが押し寄せ、仕事との両立で疲れ果てる日々。そんな父子家庭を支えたのは、19歳になった長男の笑顔と仲間の存在だった。

 だからこそ「くるみのおうち」と名づけた居場所が目指すのも、出会い、つながり、認め合うきっかけづくりだ。

写真

NPO法人「くるみ-来未」理事長の太田修嗣さん

2月に「くるみのおうち」を開所、イベントも

 昨春、空き家だった中原区上平間の2階建てを自費で購入。2階を自宅に、1階の約60平方メートルを「くるみのおうち」にした。築50年ゆえに大がかりな修繕が必要になり、自分たちでできることをやるDIYイベントも開いた。

 今年2月に開所式にこぎつけたものの、コロナ禍で活動を自粛。7月から徐々に再開し、9月下旬にはみんなでカレーを食べる催しを予約制で開いた。親子で参加した川崎市幸区の野村浩さん(64)は「自閉症のわが子は初めての場所が苦手。外食も難しい。地域に行ける場所があるのは、すごく助かる」と語った。

写真

「くるみのおうち」で9月下旬に開かれたカレーイベント=川崎市中原区で

 「地域の人たちにわが子を理解してほしいのに、その機会がない」「家庭の外で安心できる場所がない」…。くるみが7月、障害当事者の親に実施したアンケートにも切実な声が寄せられていた。

 こうしたニーズをくみ取りながら「くるみのおうち」を拠点に、今後も弁当作り体験やさまざまな専門家による催しを計画。多様な「自分らしさ」を包み込む居場所にしたいという。

 「息子と仲間がいて、親にならせてもらっている。私は、この子を育てることができて、本当によかったと思います」と太田さん。その実感が、活動の原点になっている。

太田修嗣(おおた・ゆうじ)

 兵庫県西宮市出身。長男に知的障害・自閉症があり、親子とも生きづらさを感じてきた経験から、当事者・家族を支援するNPO法人を2014年設立。「くるみ-来未」のFacebookページで詳しく紹介している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年10月13日

あなたへのおすすめ

PageTopへ