自閉症のわが子が「自分らしくいられる居場所」 父が願いを込めたコミュニティースペース、川崎に誕生

石川修巳 (2020年2月5日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる

「くるみのおうち」の開所式に向けて準備する太田修嗣さん(右)=いずれも川崎市中原区で

 自閉症など発達障害のある当事者、家族を支援する川崎市中原区のNPO法人が、築50年の空き家をリフォームし、地域交流の場を作ろうとしている。出会い、つながり、認め合う。そんな居場所作りに突き動かすのは、「わが子が自分らしく生きられる社会に」という父の切なる願いだった。

「初めての場所や公共施設が苦手」 安心できる居場所を

 「明るい未来はきっと来る!」と信じて、「くるみ-来未」と名づけられたNPO法人は、2014年の活動開始から6年。弁当作り、上映会などのイベントを月1回開催してきた。理事長を務める会社員の太田修嗣(しゅうじ)さん(43)は「初めての場所や公共施設が苦手という当事者は多い。安心できる、また訪れたくなる居場所をつくりたかった」と語る。

 自らも自閉症の長男直樹さん(19)を育てる父子家庭で、そんな居場所を求めた一人だった。「どうしたら、息子が彼らしく生きていけるのか。その思いが活動の原点です」

築50年の空き家 自費で購入しリフォーム 2階は自宅に

 昨春、空き家だった2階建ての一軒家を自費で購入した。2階を自宅に、1階の約60平方メートルを「くるみのおうち」としてコミュニティースペースにする。気軽に立ち寄れるイベント開催や、当事者らを一時的に受け入れるシェルターの役割も担うという。

障害のある当事者や家族、支援者らが汗を流した修繕作業(太田修嗣さん提供)

 けれども築50年の物件は老朽化し、大がかりな修繕が必要。自分たちでできることをするDIYイベントを開いて、壁紙を貼り替え、雑巾がけも繰り返した。「『やるよー』と旗を振ったら、障害の当事者も家族も、支援者も集まってくれた。自分たちの居場所、という気持ちが育っていったようでした」

発達障害と言われたときの「ショック」…その正体は何か

 耐震化などの工事費が想定以上にかかり、資金が100万円余不足する事態に。それでも、居場所づくりに奔走する原動力は何か。太田さんは言う。「当時2歳半の息子が発達障害の可能性を指摘され、初めは受け入れられなかった。そのショックの正体こそが、私たちの孤独感や生きづらさに通じているのではないか。そこを変えたいんです」

 目指すのは障害の有無や年齢、性別などに垣根のない社会だ。「みんなの『自分らしさ』を共有できる居場所にしたい」と語る。

 社会を変える大きな目標に向かって、一歩を踏み出す開所式は8日。一緒に汗を流した人たちとともに、喜びを分かち合う。

 居場所づくりのための寄付を呼び掛けている。詳しくは「くるみ-来未」のホームページへ。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年2月5日

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