子どもの「困った行動」には理由がある 知っておきたい「3つの感覚」 家でできる発達支援

瀬野由香
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特定の肌触りに執着する子には「小麦粉粘土」などの感覚遊びがおすすめ。触覚の発達を促すという

 椅子をガタガタ揺らす、爪や洋服をかんでしまう、特定の洋服しか着たがらない…。子どものこんな「困った行動」に、ついイライラして、「やめなさい!」と怒鳴ってしまうことはありませんか。実はこうした行動には、脳の発達の問題が潜んでいることがあります。発達支援「キッズセンス」(東京都練馬区)を主宰する茂木厚子さんは、こうした「困った行動」を改善する方法として、脳内の3つの感覚分野の発達を促す簡単な遊びを日常に取り入れることを提案しています。家庭でもできることを教わりました。

専門家が解説「自覚しにくい感覚」

 子どもの「困った行動」と関係のある感覚にはどんなものがあるのでしょうか。感覚と聞いて思い浮かぶのは、「視覚」「嗅覚」「聴覚」「味覚」「触覚」の五感ですが、総合的な運動や行動に重要な役割を果たすのは、自覚しにくい「バランス感覚(前庭覚)」「筋肉や関節の運動に関する感覚(固有覚)」「触覚」の3つの感覚です。

じっとできない、椅子をガタガタ

 茂木さんによると、じっとしていられない、椅子をガタガタ揺らす、といった落ち着きのない行動が見られる子は、「バランス感覚(前庭覚)」や「筋肉や関節の運動に関する感覚(固有覚)」の発達が足りていないため、体により強い刺激を取り入れることで、「心地よい」と感じている可能性があり、「トランポリンやハンモック、ブランコなどの大きな揺れが感じられる遊びがおすすめです」。おうちでは、食卓の椅子をバランスボールに替えたり、回転椅子に座らせて回してあげたり、お布団の上をゴロゴロ回転する、毛布に子どもを乗せて引っ張る、などの遊びも考えられるといいます。

特定の肌触りの洋服に執着する

 洋服など特定の肌触りのものに執着して、それしか着たがらない子もいます。「こうした子は、『触覚』の発達が足りていないか、触覚過敏と考えられます」。触覚の発達を促すには、子どもが心地いいと感じる程度の柔らかいブラシやスポンジで手や足の皮膚をなでてあげたり、砂場遊び、水遊び、小麦粉粘土やスライムなどの触感を感じられる遊びを取り入れるといいそうです。

友達を強くたたいたり、押したり

 他にも、友達を強くたたいたり、押したりしてしまうような子は、力の加減がうまくつかめていない可能性があります。相撲ごっこや木登りのほか、走ったり止まったりを繰り返す「だるまさんがころんだ」、ツイスターなどの筋肉や関節の感覚を十分に使う遊びが有効です。

爪や鉛筆、洋服をかんでしまう

 爪や鉛筆、洋服などをかんでしまう子の場合、口の中の感覚の発達が不足しているために、刺激を得ようとしていると考えられます。シリコン製の「チューイー・チューブ」といったグッズなどを用意して、まずは好きなだけかめるようにして口内に必要な刺激を与えてあげましょう。

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口の中の感覚を発達させるためのチューイー・チューブ

未発達な感覚を「遊び」で補うには

 茂木さんは、遊びながら「固有覚」「前庭覚」「触覚」をつなげ、適切な行動ができるよう導く「感覚統合」という理論をベースにして、発達に課題のある子どもへのアドバイスを行っています。

【感覚統合とは】「固有覚」「前庭覚」「触覚」の3つの感覚の発達に注目し、それらをうまく統合させることで適切な行動に結び付けられるようにするもの。1960年代に米国の作業療法士の女性、ジーン・エアーズ博士が学習障害児への支援方法として考案。発達障害児やグレーゾーンと思われる子どもへのリハビリテーション方法としても用いられる。

 「『感覚統合』の理論ですべてが解決するわけではありませんが、こういう方法もあると知っておくことで、子育てがぐんと楽になります」と茂木さん。「子どもが困った行動をしているな、と思ったら、その裏に何の問題が隠れているかを考え、未発達な感覚を補う遊びを取り入れて」

禁止で自信を失うと「二次障害」も

 幼少期にさまざまな遊びを体験することで、感覚のネットワークが無尽に作られ、それらがうまくつながることで、「ボールを指示された場所に投げる」「コップから水をこぼさずに飲む」といった行動ができるようになるそうです。また、脳は楽しいと感じる状態のときに最も発達が促されるため、「幼少期に楽しく遊んで感覚を育てることが一番大切」だといいます。

 「困った行動」に対し、大人から怒られたり、禁止されたりし続けることで子どもが自信を失い、不登校になったり、引きこもりになったりする「二次障害」につながるケースも見られるそう。茂木さんは「子どもと関わるすべての人に感覚の問題を知ってもらい、子どもたちへの適切な支援につなげてほしい」と話しています。

茂木厚子(もぎ・あつこ)

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 発達支援「キッズセンス」主宰。自閉症スペクトラム支援士。米カリフォルニア州の早期療育学校で、発達が気になる子どもたちを対象とした早期介入セラピーを学び、特別支援教育の場で実践、経験を積み帰国。現在は「親支援」が重要との考えから、発達支援への理解を促す講座の開催や発達に課題のある子どもを育てる親が集う場の提供を行う。

「感覚統合」もっと知りたいときは…

 「感覚統合」についてもっと詳しく知りたい人は、日本感覚統合学会が全国で講習会を開いています。日本感覚統合学会ホームページを参照してください。

 茂木さんも講師を務める子どもの発達に関する講座は次回11月14日から3回連続で開催。東京都練馬区の石神井プレーパークのホームページやママサロン「かぼちゃのたね」のTwitterで情報発信しています。

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  • 匿名 says:

    学校の先生にも是非知ってもらいたいです 怠けてるわけじゃないんです こういう理由からなんです でも子どもが自分で説明するのは難しいんです

  • マーメイド says:

    学校では「姿勢が悪い」「マスクがつけられない」「声が大きい」「急に触れられるとびっくりしてしまう」などの困りごとがありました。

    学校側に相談して対応をお願いしたり、家でできることをやってきました。

    もっと気軽に学校や家庭で感覚統合のことを知れるようになるといいな、と思います。

    学校での困りごとあるあるは発達障害の有無に関わらず皆大なり小なりあると思うので、普段の生活でこういったことを知れたら良かったです。

    マーメイド 無回答 無回答
  • 匿名 says:

    我が家は幼稚園の時「グレーゾーンって?」「優遇されたいからでしょ」等お母様方にも最終的には園にも見放されました。
    私がきちんと説明できなかったからだと後悔しかないです。
    結局園は途中でやめました。

      
  • 匿名 says:

    教育者に発達障害の事を理解してもらう必要があると思う。
    発達障害の子には健常者の子とはまた違ったサポートが必要だと思う。
    そのサポートの違いを教育者が学べる場が必要だと思う。

      
  • 匿名 says:

    健常者の人の中で育っていると、発達障害の事は理解していないと思う。映画を作って、理解してもらう事も必要です。
    親が休めるように、預かってくれる施設が必要です。

      
  • 匿名 says:

    運動指導を何年もやっていますが、発達障害のお子様が増えてきています。
    グレンドーマン氏の発達についてや、ビジョン、いろいろ勉強しましたが、このページ読み、よく理解できました。沢山の方と共有していきたいと思っています。ありがとうございました。

      

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