生きづらさを抱える母親たちがコロナ禍で苦悩 子育ての悩み「相談でガス抜きを」 11月は児童虐待防止推進月間
緊急事態宣言が明けて、相談が増加
NPO法人ひだまりの森(港南区)は「子育て期の相談」を掲げ、おむつが取れないといった育児相談ではなく、「ママ友との付き合いが苦しい」など親自身の悩みに耳を傾けてきた。昨年は電話や対面で約2000件の相談があったという。
理事長の林順子さん(62)は、人付き合いが苦手などもともと生きづらさを抱えた母親らが、コロナでストレスをためた人からいら立ちをぶつけられるなど、さらに生きづらくなっていると指摘する。「コロナ前は『ちょっと変わった人ね』で済んだのが、ママ友から仲間外れにされたり、在宅勤務になった夫から暴言を吐かれたりとの相談がある」と明かす。「人間関係がぎすぎすして、弱いところにしわ寄せがきている」
緊急事態宣言中は夫や子どもが家にいて相談の電話がかけられないとみられ、相談件数は激減。宣言が明けると「苦しかった」との連絡が次々に入るという。コロナで在宅時間が増え、インターネットでいろいろ調べすぎて負のスパイラルに陥りうつ状態になったり、電話口で泣きだしたりする人も。「その陰で虐待が起きるかもしれない」との思いで丁寧に話を聞く。
相談ではアドバイスするのではなく、相談者が前向きになれるよう視点をずらすことを心掛けているという。「冷蔵庫に納豆があれば『納豆しかない』じゃなくて『子どもに納豆を食べさせてあげよう』でいい。納豆を買ってきた自分は頑張った、と。電話を切ったときに気持ちが少し明るくなってもらえたら」と林さんは話す。相談は無料で月曜から木曜午前10時~正午、午後1~4時。祝日は休み。ひだまりの森=電045(341)3607=へ。
近隣・知人からの虐待相談も増加
全国の児童相談所が対応する虐待件数は増加傾向が続くが、昨年度は横浜市は増加する一方で県は減少するなど、新型コロナによる件数への影響ははっきりしない。
市中央児相の袋和美支援課長は、市児相が昨年度に対応した虐待件数の相談経路別で「近隣・知人」が増えており、コロナで在宅する人が、怒鳴り声や子どもの泣き声に気付く場合が増えていると分析。コロナ禍で増えた「家飲み」をしていて夫婦げんかがエスカレートするケースは「これまでは外で飲酒し、帰宅する間にクールダウンできていたかもしれない」と話す。
県中央児相の杉山徹子ども支援第一課長は「児相が果たす役割はコロナ禍も変わらない」としつつ、コロナ対策で児童養護施設の受け入れ準備に時間がかかり、虐待などで一時保護された子が一時保護所で過ごす期間が長くなったり、施設にいる子が家庭に戻るために必要な保護者との面会交流がなかなか実施できないなど影響があったという。
12月4・5日に虐待防止学会「かながわ大会」
児童虐待の解消と防止には、子どもだけでなく保護者への支援も欠かせないとして、学会は副題を「誰ひとり取り残さない~思いをカタチに~」とした。オンライン中継もするため、参加定員は設けない。
英国の児童保護制度改革の経緯や、米国の性的虐待被害者を20年以上にわたり追跡調査した結果などの報告講演のほか、新型コロナウイルス感染拡大による接触自粛で支援が届きにくくなった家庭に、どう対応すべきか議論するシンポジウムなどがある。
実行委広報担当で、聖マリアンナ医科大学の栗原八千代助教は「児童虐待は社会で取り組むべき課題だ」と話している。参加費は学生3500円、非会員1万2000円など。詳細は、同大会の特設ホームページで紹介している。(志村彰太)
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