「やりすぎ教育」に注意!親の不安が子どもを追い詰める 教育熱心が教育虐待にならないために

( 2021年7月16日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 わが子の才能を伸ばそうと、小さな頃から塾や習い事に通わせる教育熱心な親は少なくない。ただ、親が気付かないうちに「教育虐待」の状態になり、子どもを追い詰めているかもしれない。教育熱心と教育虐待はどう違うのか。専門家は「親の不安や欲望を押しつけず、子どもの立場で考えて」と訴える。

図解 やりすぎ教育 「教育熱心な姿勢」と「教育虐待」の違い

教育熱心なあまり、つい過剰な言動に

 「やりすぎ教育 商品化する子どもたち」(ポプラ社)の著書がある臨床心理士の武田信子さん(58)によると、教育熱心は、子どもをよりよい状態にしたいと努める親の「姿勢」。一方、教育虐待は、子どもが耐えられないほど過度な教育を強制する親の「行為」のこと。教育熱心なあまり、つい過剰な言動を取ってしまうことは誰にでもありうるという。

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武田信子さん

 「親が子どもにおいしいものをたくさん食べさせたいと、テーブルいっぱいに料理を並べるのは愛情」と武田さん。同様に進学塾や英語、プログラミングなどの習い事を並べた場合、子どもが苦痛と感じなければ教育熱心な姿勢といえる。

 だが、子どもが「食べられない」と言っているのに、親が「せっかく作ったんだから全部食べなさい」と無理強いすると、子どもは愛情と感じられなくなる。武田さんは「おいしいと思うかどうかは提供する側ではなく、食べる側が決めるということを忘れてはいけない」と強調する。

教育はサバイバルツール、という意識

 教師教育学の研究者でもある武田さんは、これまで世界中の教育現場を視察してきた。「『勉強しなさい』とガミガミ言う親は、日本などアジアの一部の国に多い」。原因は親個人の問題よりも、親の不安があおられる競争的な教育環境にあるといい「教育を、競争社会を生き抜くサバイバルツールとして捉える傾向が強い」と指摘する。

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武田信子さんの著書「やりすぎ教育 商品化する子どもたち」

 親ら大人世代が感じる将来への不安や欲望を押しつけられ、子どもが強制的に学ばされていると感じる状態を、武田さんは教育をかたった不適切な行為「やりすぎ教育」と呼ぶ。宿題を終えるまで寝かせないなど「子どもを苦しめていても、親が子どもに必要な行為と思い込んでいると虐待になりかねない」。親は「やりすぎ」か迷ったら、「自分が同じように配偶者や上司に言われたら」「子どもの時、親に言われて嫌だったことでは」と立ち止まり、子どもの立場に身を置いて考えてほしいという。

親がすべきは、勉強したい環境づくり

 国連子どもの権利委員会は日本政府に対し、競争的な教育環境の改善を何度も求めてきた。武田さんは「子どもの権利条約にも『休む権利、遊ぶ権利』がうたわれている。今、日本の子どもたちに必要な権利だ」と話す。

 勉強しなくていい、子どもの言いなりになればいいという意味ではない。親がすべきなのは子どもを勉強に追い立てることでなく、子どもが「勉強したい」と思える環境を整えること。「親が楽しそうに学んでいる姿を見せるのが何より」と武田さん。例えば英語なら「受験科目だから」ではなく、英語でのコミュニケーションを楽しめる機会を与えたり、好きなアニメなどから学べるよう工夫したりするのもいい。

 「子どもの才能を伸ばすにはまず、土台となる親子の安心できる関係を育むことが大切。その上で、大人にしかできない情報提供などをして、意見を聞き、適度な関わり方を見つけて」

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