「明日、学校へ行きたくない」のはあなたのせいじゃない 「こども六法」著者・山崎聡一郎さんの思い

子育て世代がつながる
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「かつて『学校に行きたくない』と思っていた大人のみなさんにも読んでもらいたい」と話す山崎聡一郎さん

 「学校に行きたくないな」。そう思ったことはありませんか? 学校に行くことに息苦しさを感じる子どもたち、かつて感じていた大人たちから寄せられた体験談を題材に、3人の専門家が意見を交換する動画番組が昨年8月、配信されました。今年2月には番組を基に、専門家の解説やコラムも交えた書籍も出版されました。番組に登場した専門家の1人で教育研究家の山崎聡一郎さん(27)は悩む子どもたちに「まずは、行きたくないという気持ちを認め、じっくり自分と向き合って」とアドバイスします。

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ニコ生で番組 視聴者の体験を共有

 内閣府や、一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターの過去の統計では、夏休みが明ける9月1日前後に子どもの自殺者数が増える傾向があります。動画配信サイト「ニコニコ生放送」を運営するドワンゴは2018年から毎年この時期に、「明日、学校へ行きたくない」と題して、子どもたちの悩みを専門家と共に考える番組を配信。3年目の昨年は、山崎さん、脳科学者の茂木健一郎さん、臨床心理士の信田さよ子さんの3人が、視聴者からの率直な思いや体験談について、約2時間、議論しました。番組は今も視聴できます。

 山崎さんは番組について、こう振り返ります。「はっきりと言葉に表せない、もやっとした悩みに、スピーカーの3人だけでなく、画面に流れるコメントをくれる視聴者も含め、みんなで考えていこうという企画でした。例えば、今、虐待に悩む子どもにスパッと解決策を提案するのは難しい。だけど、まずは『大変な思いをしているね』と共感する。そして、『虐待している大人が悪い』『あなたはダメな子じゃない』という姿勢ははっきり示す。解決するのは難しいけど、決してあなたのせいじゃない、と伝えたかったんです」

茂木健一郎さん「脳の回路が”無理”」

 番組を基にした書籍「明日、学校へ行きたくない」(KADOKAWA、税別1200円)では、「塾漬け生活の末に入った名門中学校に夏休み明けから通えなくなった」「厳しい担任が他の子を叱るのを見るのが嫌で学校を休みがちになった」「学校ではいじめ、家では父から暴力を受け、居場所がない」といった視聴者の経験談と、3人の見解を紹介しています。共通しているのは「行きたくなければ無理して行かなくていい」「学びの場の選択肢は学校以外にもある」ということ。

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「明日、学校へ行きたくない」(KADOKAWA)

 茂木さんはコラムの中で「苦しいことがあっても、最初のうちは我慢して行けるけど、あるところで脳の感情の回路が無理だと結論を出す。こうすれば行けるという単純なものではない」と解説。親は子どもの言っていることを信じて、不登校も個性の一つの表れ方ととらえ、子どものありのままを受け入れ、伸ばしてあげることが大切、とつづります。

 信田さんは、テストの点が悪い、勉強をもっと頑張ってほしいといった理由で、子どもに精神的、肉体的苦痛を与えて勉強させる「教育虐待」に触れ、「もしもこの本を読んでいる君が勉強が苦しくてつらいと思っているなら、頑張った自分を休ませてあげましょう。そして、だれかにその気持ちを伝えてください」と励まします。

普通になりたい、と思っていたけど

 いじめに苦しむ子どもたちに、法律が味方になってくれることを伝えようと2019年に「こども六法」を出版した山崎さんは、子どもたちに「将来への不安は誰にでもあるが、自分の人生を他人任せにせず、自分の夢や目標に向かってできることに集中して」と呼びかけます。

 周囲から浮いている、「理解できない」と言われる、避けられる…。山崎さんは小中学校のころ、「『普通』になりたい」「自分には、みんなの中に溶け込める素質がない」と思っていたそうです。ところが大人になってみると、難なく人間関係を築けて、一般企業に就職した、自分から見れば「普通」だと思っていた人も苦労していることを知り、「結局、みんな苦労する。誰しも『普通』だし『特別』なんだ」ということに気づいたと言います。

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「学校に行けなくなったばかりの頃は『何もしない』のも選択肢のひとつ」と話す山崎聡一郎さん

「行きたくない」時間は無駄じゃない

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う休校は、友人関係の構築やコミュニケーション能力の向上、集団生活の心構えなど、「学校でしか学べないこと」の大切さを再認識する機会になりました。山崎さんは「せっかく学校の意義を子どもたちが意識する機会があったのに、再開後の学校現場は子どもたちのための教育ができているか。大人がカリキュラムをこなすことに追われ、教えたいことを教えるだけの場になっていないか」と疑問を投げかけます。

 「個々人の自己実現に価値が置かれれば、その延長線上に社会秩序に貢献したいという意識が育つんです」と山崎さん。大人が思う「普通」を子どもたちに押しつけていないか。「学校に行く、行かないは、人生の途中の選択肢のひとつでしかない。行きたくないという気持ちを受容し、子ども自身が『何がしたいのか』考えられるようになるまでは見守って。子どもが自分としっかり向き合う時間は、決して無駄ではありません」

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