大地震、川崎市の想定と対策は ライフラインの被害、津波の程度… 確認したい日ごろの備え

小林由比、北條香子 (2024年1月7日付 東京新聞朝刊)
 元日に石川・能登地方を襲った大地震。家屋の倒壊などで避難生活を余儀なくされている被災者も多い。あらためて川崎市の対策を確認するとともに、日ごろの備えを確認したい。

避難所の開設訓練をする関係者ら=中原区で、市提供

発生直後の避難者36万人

 川崎市が最も大きな被害をもたらすと想定しているのが市直下型地震。市内全域で震度6程度の揺れが起き、建物は約2万2300棟が全壊し、約4万9000棟が半壊。火災も約240件発生し、約1万6300棟が焼失すると見込む。これらの建物倒壊や火災などにより死者は800人以上に上ると予測されている。

 断水が約35万世帯で起きるほか、停電する世帯も39万世帯に及ぶなどライフラインの被害も大きいとみられ、震災発生直後の数日間、避難生活を送る市民は36万人に上る予想だ。

指定避難所に設けられている備蓄倉庫=市内で 市提供

 自宅で過ごせなくなった人たちが避難する市指定避難所は176カ所あり、すべてに備蓄倉庫がある。市の担当者は「すべての物資を市でまかなうのは難しい。自宅にとどまる場合などに備え、水や携帯トイレなどを各家庭で用意してほしい」と呼びかける。

津波最大3.71メートル

 市直下型地震による津波の発生は想定されていないが、最大規模の津波が起きると想定される慶長型地震が起きた場合、川崎港には最大で3.71メートル(満潮時)の津波が到達し、川崎区内では最大2~3メートル浸水する地域も出る。市は学校や民間施設など計106カ所を津波避難施設に指定している。

ウェブやラジオでも発信

 防災に役立つ情報をまとめた「備える。かわさき」は冊子版が各区役所などで入手できるほか、川崎市のホームページからもダウンロードできる。「若い世代にも日ごろから防災に関心を持ってほしい」と、市の防災ポータルサイトで、ウェブ版の充実も図り、たとえば非常時の持ち出し品をスマホでチェックすることもできる。昨年9月には、日常生活で使う商品やサービスを災害時に転用するヒントなどを伝えるマガジンも発刊した。

 かわさきFM(79.1メガヘルツ)では毎週月曜、市危機管理本部などの職員が出演し、防災情報を伝える番組を放送。本年度からは放送内容の概要も市ホームページに掲載している。

外国人や女性の支援も手厚く

 市は「災害弱者」を取り残さない取り組みとして、市ホームページの「ぼうさいライブラリー(オンライン版)」に、外国人向けのサイトやアプリを紹介するリーフレットを15の言語で作成して掲載。また、避難所運営に女性の関わりを増やし、女性特有の困り事などにも対応できる体制を目指す。

 災害時に情報を入手する方法としては、「かわさき防災アプリ」のほか、「メールニュースかわさき」や市のライン公式アカウントに登録しておくとよい。

 市の担当者は「能登地震の被災地域と比べ、人が密集している川崎では都市部ならではの課題がある。各自の日ごろからの備えを見直してもらうほか、近隣同士で声を掛け合える関係をつくっておいてもらうことが重要」と強調する。

 市はすでに上下水道局の職員などを被災地に派遣している。福田紀彦市長は4日の定例会見で、被災地での細かいニーズを「現在進行形で学んでいる」とし、「災害派遣の積み重ねも市の防災対策に生かしたい」と話した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年1月7日