娘の生理、父親や兄弟に伝えるべき?〈性教育10の悩みに答えます⑤〉
東京すくすくは、開設3周年を記念して、気になるテーマを楽しく学べるオンライン講座を企画しました。第1弾は「性教育」です。講座〈教えて!サッコ先生 性教育10の悩みに答えます〉で取り上げた質問を、記事でもテーマごとに紹介します。娘の生理を見守るお母さんからの相談です。
質問5. 娘の生理のことを、父親や兄弟に伝えるべき?
「中学生の娘のお風呂やトイレのあとに、小学生の弟が『血がついてる!』と騒ぎます。生理を伝えることを娘が嫌がる場合はどうすればいいですか?」という質問です。ほかにも、「娘の生理を夫・パパに伝えるタイミングを逃してしまった」「自分自身がお赤飯を炊かれてイヤな思いをした」というお母さんから、「家族の男性にも生理のことを伝えた方がいいのか、どのように伝えたらいいのか」という悩みが寄せられました。
隠すものではないが本人の気持ちが大事
サッコ先生 まずお嬢さんに、お風呂を上がるときに周りを見渡して、髪の毛など排水溝に残っているものを自分で処理する習慣を身につけてもらいましょう。「周りを見て血液が残っていないようにするのは、マナーでもあるよ」と伝えてあげてくださいね。そうすると、経血の内膜の組織などが排水溝にこびりついて残っているのを見て、弟さんが見て「血だ!」とびっくりしてしまうこともなくなります。お風呂上がりに、一人ひとりがちゃんと排水溝を片付けて出てくるようになると、掃除も楽になりますよ。
そして、そもそも月経を隠すものではないよ、とこの先は伝えていけるといいですね。最近は、テレビのニュースなどでも、月経についてだいぶオープンに伝えられるようになってきました。ただ、月経という現象についてみんなで学ぶことはできても、「私個人の」という話は別。自分の月経の話をみんなに知られることをどう感じるかは、一人ひとり違います。
「月経が来たときにお赤飯を炊くかどうか問題」、これは本人がどうしてほしいと思っているかが大事です。本人とお母さんだけで、もしくは女性の家族と、パフェを食べに行ってお祝いしてもいいですし、いろんな方法があります。「お赤飯を炊くよ/炊いてもいいかな/それを家族でみんなで食べてもいいかな」と尋ねて、希望を聞いてあげましょう。「それはやめて」という場合もあると思いますよ。
家族で共有し、サポートするチャンスに
ただ、やはり月経について家族全員が知り、共有するチャンスなんですよね。「お姉ちゃんは大人の女性に向かって体が順調に発育しているから月経が来たよ。月経のときは痛い日だとか、つらい日だとか、眠い日だとかがあるから、家族みんなでサポートしてあげようね。これはお姉ちゃんだけじゃなくてママもなんだよ」ということを、みんなで共有するチャンスです。
私の講座では、月経前症候群の説明の中で「いつもとっても優しいママなのに、1カ月に1日だけすっごいイライラしてる日があるでしょ~?」って中学生に言うとゲラゲラと笑いが起こります。男の子もママの変化を感じているのだと思います。それを「『それってねママ、月経前症候群っていうらしいよ』と指摘するのではなくて、黙って何かひとつ、いつもより手伝いをしようね」と、集団教育の中では声がけをしています。
パパに伝えるかどうかですが、ママが不在の時に、血液でイスを汚してしまった場合など、パパのサポートが必要なことが出てくるかもしれないので、できればパパにも知っていてもらいましょう。パパが知ってるということを伝えるかどうかは、パパとママの間で相談して。「困ったときにはいつでも相談に乗るよ」という態勢を家族が整えておけるといいですね。
すくすくにも登場する助産師の桜井裕子さんは、女性の家族は全員、家庭のトイレのカレンダーに「月経が来ました」マークを付けるそうです。そうすると、次の月経の前の頃に、「なんかイライラしてるけど、生理前だから仕方ないな」とほかの男性家族たちが配慮できるようになる。
中2の息子に「ナプキンを買ってきて」
私自身、子宮筋腫があって大出血をしたことがあります。おなかが痛くて寝込んでいた時に、生理用のナプキンを自分で買いに出られない状況で、中2の息子に「お願いだから買ってきて」と頼んだことがあったんです。「学校の帰りにこの商品を買ってきてほしい」と写真を送って。中学2年生の男の子にそんなこと頼んで大丈夫かな、という気持ちもあったのですが、なんのちゅうちょもなく「はい」ってその通りのものをちゃんと買ってきてくれました。お店の店員さんに「これどこにありますか」って写真を見せたようです。恥ずかしいものだという先入観がなければ、そのあたりもスムーズにできるんだなと思いました。
家族で「月経というのがある。つらい日もあって、そこは他の家族がサポートしなければいけない」と共有できると、家族旅行の計画を立てるときも、「この時期だと誰かが温泉には入れないね」といった相談もできるかなと思います。
高橋幸子(たかはし・さちこ)さん
「趣味・性教育、特技・性教育、仕事・性教育」の産婦人科医。愛称は「サッコ先生」。埼玉医科大で医師として思春期外来などで診察に当たるかたわら、全国各地の学校などで年間120回以上性教育の講座を行う。家庭でできる性教育も支援しようと、サイトの監修や本の出版もし、多角的に活動する。著書に『サッコ先生と!からだこころ研究所 小学生と考える「性ってなに?」』(リトルモア)。
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