子育てのモットーは「日々模索」「そのうちなんとかなるだろう」 菊池亜希子さん×加瀬健太郎さんスペシャルトーク(後編)
◇前編はこちら → 子育てのイライラにどう向き合う? 菊池亜希子さん×加瀬健太郎さんスペシャルトーク
Q4. パートナーとの間で気を付けていることは?
今川綾音・東京すくすく編集長 パートナーとの間についての質問も来ています。4つ目の質問です。「出産後、夫婦の関係も変化するケースが多いようです。子育て期に子どもを交えたよい関係を築くために、パートナーとの間で気を付けていることはありますか」
菊池亜希子さん 夫から聞いた、あるミュージシャンのミュージックビデオの話です。若い頃からたくさんけんかをしてきた夫婦が、けんかをするたびにその理由をふせんに書いて壁に貼る。年を取っていくにつれて、家中がふせんで埋め尽くされていく。そんな情景を写した歌があるそうで、すごくいいなと思いました。
違う人間同士、私たち夫婦もたくさんけんかをする。でも、だいたいいつも同じことでけんかしてるんですよ。うちの場合は、「できない」と言うと私がむっとするから、夫はできないことをとりあえず「できる」と言って抱えるんです。でも結果的にやれないので、私も「だったら手放してよ」と。
夫婦ってそういうことの積み重ね。わが家は実際にふせんを貼っているわけではないのですが、同じことで何度もけんかしながら共有して、「あの時、ああ言ったから相手が傷ついた」「怒った」というのがストックされていく。それが重なってきたのか、昔ほどは同じようなことでけんかしなくなってきました。
今川 けんかのネタも夫婦の歴史になっているのかもしれませんね。加瀬さんは奥さんと大事にしていることはありますか?
加瀬健太郎さん 僕は仕事に行く前にチューしてもらうんですよ。玄関で。今日もしてきました。軽いヤツですよ。これはなかなかいいのではないでしょうか。
今川 昔からなんですか?
加瀬さん そうですね。
今川 子どもたちも知ってる?
加瀬さん 僕が出て行く時は、今は一番下の子がかろうじて来るだけで、誰も出てきませんから。子どもが知っているか知らないか、僕は知らないですけど。
今川 いいですね。子どもに「いってらっしゃい」は必ず言おうと思っているんですけど、パートナーに対してなかなかできないという気がしません?
菊池さん (目をくりくりさせて無言)
加瀬さん 菊池さんは、そんな言えないですよ、女優さんですから。
今川 たしかに…! 送り出す方だったり送られる方だったりだと思いますが、朝、「いってらっしゃい」とお互いしっかり挨拶をしています?
菊池さん 出て行く時間がお互い不規則なので、加瀬さんのとこほどコミュニケーションをしている感じではないです。でも、夫がちょっと弱っているなと感じる時は「手当て」じゃないですけど、手を背中に当てる。そういうのは見逃さないようにしています。
今川 「見逃さないようにしている」って言葉がいいですね。ちゃんとパートナーのことを見てるよ、と。加瀬さんは、逆に自分も見てもらっているなと感じることってあります?
加瀬さん 妻は僕のこと、あまり見てくれてないです。
今川 でも私、加瀬さんの連載「お父ちゃん やってます!」の原稿を毎月見てますけど、最後のオチで奥さんの突っ込みが、すごくキレがあるんですよ。これはよく見てないと出ない突っ込みだなと。だから見てくれているんじゃないですか?
加瀬さん 今日のこの会場みたいに、こんなに話を聞いてくれないです。携帯さわりながら「うんうんうん」です。
今川 気を付けます、私も。
菊池さん 私も気を付けます。スマホがよくない、本当に。スマホで仕事ができちゃうのがよくないですよね。自分にも相手にも、「今、それ大事?」と問いたい。極力、スマホを触らずにすむといいなと思って、夕方以降と土日は控えています。
今川 スマホって子どもの写真を撮るのにも使うので、触りがちになってしまいますよね。
Q5. 子育てで大事にしていることは?
今川 さて、最後の質問です。「大変なことも、うれしいこともすごく多い子育てですが、子どもを育てる中で大事にしていることや自分のモットーがありましたら、教えてください」
加瀬さん 「そのうちなんとかなるだろう」と思うようにしています。植木等さんの(「だまって俺について来い」という)歌のように。子どもが虫を踏んでいたら、「将来、警察にお世話になるのではないか」、宿題をやらなければ、「こいつアホになりそう」「アカン人生を歩むのでは」と親は不安になっちゃう。瞬間でとらえると「ああ、こいつやばいヤツになりそう」と焦るけれど、「まあ、そのうちなんとかなるだろう」と考えることにしています。
今川 少し長いスパンで見ればなんとかなるだろうと。
加瀬さん それで皆さん、やってみて、そのうちなんとかならない場合は責任は持ちませんけれど…。
今川 加瀬さんの中1のお兄ちゃんがすごくすてきに育っているので、そのうちなんとかなるはずです。
菊池さん 今朝、夫と子育てのモットーはなんだろうと話していて、「日々模索だよ」と。親になって子育て本を読むこともあるんですけれど、ふむふむとは思っても、100%の答えはやっぱり載ってない気がします。
例えば授乳のこととか、私は1人目の時にすごく悩みました。もともと根がまじめな上に理数系の部分もあって、本に頼った結果、その通りにできてないことで追い詰められて余計にしんどくなってしまいました。外からの情報に頼るのをやめて、私と目の前の子どもで向き合うようにしたら、授乳がすごくうまくいった経験があります。
いろんな人にも相談したけど、どの人も話すのは自分の成功体験。その人にとっては成功だったとしても、他の人にとってはうまくいかないこともすごく多いので、結局、子育ての答えは、その親子の組み合わせで解決するしかない。私の中に正解はないし、子どもも正解は分かってないから、親子で一緒に探す。
もうひとつは、子どもが描いた絵や手紙を箱にとっておくこと。子どもに「ママ、なんでここにいつも入れとくの?」と聞かれたので、「おばあちゃんになった時に見返すためだよ」と伝えた。それ以降、子どもたちが「はい、おばあちゃんになった時に見るやつ。箱に入れといて」と持ってきてくれるようになった。それを楽しみに最近は子育てをしています。おばあちゃんになった時のお茶のお供になると思えば、たいていのことは楽しめることに変わる。すごく大変な場面もメモったりノートにつけたりしておいて、老後の楽しみにするんです。
今川 お二人とも、今の一点だけじゃなく、長いスパンで見ているのがすてきだなと思いました。子育てのスタート地点にいる方も今日は多いと思うんですけど、こんな視点もぜひ「子育てすくすくフェス」のお土産にしてください。菊池さん、加瀬さん、今日は楽しい時間をありがとうございました。
菊池さん、加瀬さん ありがとうございました。
2部では歌をプレゼント、3部の「子育てトーク」では、子育て中の親が「自分をどう見つめていくか」について語りました。
→ 子育て中でも自分の大切なものを手放さず、そっと握っておいてください 「子育てすくすくフェス」歌&子育てトーク
スペシャルトーク前編では、子育てのイライラや一人の時間の持ち方について語り合いました。