〈えほん〉のコーナーで対象年齢を書かない理由は? 直木賞作家・今村翔吾さんの言葉

(2024年2月2日付 東京新聞朝刊)

暮らし面の「えほん」のコーナー。作品の対象年齢は紹介していません

 新刊の絵本を紹介する水曜・暮らし面「えほん」のコーナーに時折、読者の方から「絵本の対象年齢を書いてほしい」という手紙やメールをいただきます。ささやかな記事に目をとめ、貴重なご意見を届けてくださり、ありがとうございます。

 たしかに、絵本や児童書に対象年齢を記載している出版社もありますし、選ぶ際の目安にもなります。私たちも折に触れ「対象年齢を載せるかどうか」の検討を続けています。

 現時点では、子どもたちが多くの絵本と出合う可能性を広げるためにも、対象年齢の紹介を控えています。普段自分が使う言葉よりもシンプルな表現で書かれた絵本が心に響くこともあれば、内容が少し難しい作品を大好きになることもあると考えるからです。

 「本の対象年齢」というテーマについては昨秋、直木賞作家の今村翔吾さんに取材をした際に言われた言葉が私の心に残っています。今村さんは昨年、厳しい環境にいる子どもたちへ本を贈るブックサンタの取り組みに「作家サンタ」として参加。今村さんを含む10人の作家が「子どもたちへおすすめの一冊」を推薦しました。子どもには難しい本も多く選ばれているように感じて尋ねると、今村さんから「作家たちは子どものことをなめてないんです」という答えが返ってきました。

「作家たちは子どもたちの選択を狭めていない」と語る今村翔吾さん

 今村さんの元には、自身の著書「塞王の楯」を8歳の子どもが夢中になって読んでいるという読者の声が届いたことがあるそうです。「30歳にとってもまだ早い小説はあるかもしれないし、小学校低学年でも全然早くない小説もあるかもしれない。作家たちは子どもたちの選択を狭めていないんだと思います」

 「えほん」では、今後も子どもたちの世界が広がるような作品を紹介していきます。