女優 吉岡里帆さん 親の反対を押し切って上京した「衝動」

大沢悠 (2018年7月22日付 東京新聞朝刊)

デビューする時に、両親に「本当にそれでいいの?」と心配されたと話す吉岡里帆さん(高嶋ちぐさ撮影)

高校生のときに父に薦められた本は…

 両親と弟の4人家族です。しょっちゅうみんなでお出掛けする仲良し家族。最近、仕事で大阪へ行った時も実家がある京都に寄ってみんなで焼き肉に行きました。電話もよくします。体調どう?とか。

 母と父は、お互いにサポートし合い、愛し合っている夫婦だと思います。父が映像関係の会社をつくる時、母がアパレル業界で働いてためたお金を軍資金として渡したそうです。

 母も父もアーティスティックなものが好き。美術、音楽、映画、本…。よく二人で音楽のライブや美術館に行ったりしています。家には本や漫画がいっぱいある。高校生のころ、父に薦められてアランの「幸福論」を読みました。「これは絶対に読んでおいた方がいい。将来、強く生きるための方法がここにはいっぱい載っている」と言われて。本だけじゃなく「この映画、見ておいた方がいいよ」とか、いまも連絡をくれます。

 この間、母親に本をプレゼントしました。プレゼント交換がすごく好きなんです。理由がなくても、久しぶりに会うからとか、化粧品や香水を使ってみて良かったからとか。母は無邪気で、少女のよう。私が母のお姉ちゃんみたいな感じ。でも、私が真剣に悩んでいて相談すると、ちゃんと相談に乗ってくれます。

よくしゃべり、よく笑い、よく泣く

 家族はみんな動物好き。実家には猫5匹と大型犬1匹がいます。昔、母が弱ったハトを拾ってきて家族で2週間ほど世話をしました。ハトは元気になったのですが、家族がアレルギーみたいになってしまったこともあります。植物も大好きです。両親はガーデニングが共通の趣味。実家の庭は、バラのアーチがあったり、秘密の花園みたい。みんなでバーベキューをすることもあります。

 けんかすることもありますよ。デビューする時、両親に「本当にそれでいいの?」と心配されました。演劇や映画を作るのは文化的でいいけれど、趣味の範囲でしてほしいと思っていたみたいです。でも、抑えられない衝動があって、反対を押し切って東京に出てきました。映画のオーディションを受けたり、自分で俳優の養成所を探して通うようになってからは、本気だということが伝わったようで、映画のオーディションに受かった時は、とても喜んでくれました。

 自分が子どもを産んだら、こういう温かい家族にしたいなと思います。よくしゃべり、よく笑い、よく泣く。悲しい時は一緒に悲しくなってつらい思いもするけれど、喜びも共有する。喜怒哀楽を一緒に共有するのが、仲良しの秘訣(ひけつ)だと思っています。 

吉岡里帆(よしおか・りほ)

 1993年、京都市生まれ。テレビドラマやCMで活躍。NHK連続テレビ小説「あさが来た」の出演で注目を集めた。フジテレビ系で放送中のドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」で主演を務める。