37年ぶりのキャッチボール 互いに父となり再会〈清水健さんの子育て日記〉64

(2024年9月11日付 東京新聞朝刊)

息子とばあちゃん。幸せな光景。2024年夏の大切な思い出

 

親の都合を押しつけてしまった 

 朝から何かイライラしていたように思う。前日に予定が変更になった仕事があり、このスケジュールをずらすとどうなる? 頭の中はシミュレーションでいっぱいだったのかもしれない。

 理由は何だったか忘れるほど、どうでも良いことで、学校へ行く息子が家を出るまでのルーティンをくずしてしまった。不機嫌になった息子に不機嫌な自分で返す。今ならわかる、僕が悪い。ダメだな、親の勝手な都合。「今日も学校、楽しむんだよ!」。いつものように言葉をかけられなかった朝の自分を反省する。

 少年野球のユニホームの着こなしも、それなりになってきた。新しく買ったグラブ。知り合いにお願いをし、息子の手にあった「型付け」をしてもらった。そのグラブを「型がくずれるから」とバッグには入れず、大事に抱えてのグラウンドまでの行き帰り。家に帰ってからも丁寧に手入れをし、きちょうめんに自分仕様のグラブを置く。

 その姿はいとおしく、好きなことを見つけてくれた「うれしさ」を感じる。一方で、いつまでこうやって息子と一緒にグラウンドに立ち、一緒に汗を流せるのかなと、「さみしさ」も時に想像することがある。

 それなのに、理由も覚えていないことで息子との時間を不機嫌に過ごしてしまった。「いつも」の大切さを、いつも息子に教えているはずなのに。

子ども同士も仲良くしてくれて 

 この夏、懐かしい再会がありました。僕自身が小学生時代、少年野球で一緒にグラウンドを走り回った先輩。連絡は取りあっていたけれど、実際に会うのは37年ぶり。お互いに親となり、子どもたちは同じように少年野球チームに入っている。子どもたちの好きな唐揚げや焼き肉を囲み、思い出話に自然と笑顔に。

 まだ明るい外を見て、「キャッチボールしようか!」。37年ぶりのキャッチボール。「どう、上手(うま)いだろ?」。子どもたちは「ふーん」という顔をしながら見ていたけれど(笑)、楽しそうな親たちの姿を見せられることがうれしい。僕たちに代わり、子どもたち同士もキャッチボールを。その姿を見る僕たちは間違いなく最高の表情をしていたと思う。

 先輩には妻のことで多くの心配をかけ、どう声をかければいいのか迷わせたこともあったと思う。でも、今こうやって、また一緒の時間を過ごせ、子どもたち同士が仲良くしてくれている。親としての喜び。

 「妻がいてくれたら」。考えても仕方がないことをふとしたときに想像する、強くなんてない父親だけど、息子の成長とともに時間は確かに進んでいます。

清水健(しみず・けん)

フリーアナウンサー。9歳の長男誕生後に妻を乳がんで亡くし、シングルファーザーに。

コメント

  • 孫と手を繋げる幸せを私も感謝しています。旅行に行った時笑える幸せや美味しい食事をいただくと私だけ…ごめんねっとフッと思う自分がいますが幸せな姿を見ててねと思う自分もいます。会いたい気持ちは永遠ですがい
    空 笑顔 女性 60代 
  • 久々に清水さんの姿を拝見いたしました。 清水さんのファンでした。出来ましたら戻ってきてほしいものです。沢山の方々が待ってるかと思いますよ。清水さん息子さん何時までもお元気で、息子さんの成長を楽し
    ノンちゃん 女性 70代以上