子どもの自殺が最も多いのは8月下旬 夏休み短縮の影響も?

佐橋大、原尚子、井上靖史 (2018年8月26日付 東京新聞朝刊)
 子どもの自殺が最も多い時期は8月後半-。9月1日に児童生徒の自殺が多いとのデータを基に夏休み明けの自殺対策が広がる中、国の自殺総合対策推進センターは、直近の10年間では8月下旬が最多との分析を明らかにした。同センターは「9月1日という特定の日に限らず、夏休みの後半から明けにかけて広く、児童生徒の自殺防止の取り組みを進めていくことが必要」と注意喚起している。

 9月1日だけではない

 センターは1976年から2015年まで40年間の小中学生と高校生の年齢に当たる自殺者数を、10年ずつに分けて旬ごとに比較した。05年までは、いずれも9月上旬が最多だった。だが、06~15年は8月下旬の自殺者数の合計が153人と9月上旬の122人を上回り、ピークになった。センターの担当者は「一部自治体が夏休みを短縮化した影響も考えられる」と話す。

 また、73~2015年の自殺者数を日ごとに分析すると、中学生と高校生で自殺者数が最多の日は9月1日だったが、小学生は11月30日。学校の段階によっては、9月1日が最多にならないことも分かった。

 9月1日が、18歳以下の自殺が最も多い日という認識は、15年6月に内閣府が公表した自殺対策白書で広がった。これを受け、フリースクールなどの民間団体や教育委員会が9月1日前後の相談体制を強化する動きが広がっている。

相談窓口はこちらです 電話でも、ふらっと来てもいい

 「学校が怖い」「なんとなく行きたくない」。新学期を前に、そんな気持ちが高まる子どもたちのSOSを受け止めようと、支援団体などは、電話相談などに力を入れている。

 「一日一日と新学期が迫ってくる時期。緊張や不安も募りやすい」

 関東四カ所でフリースクールを開く「東京シューレ」(本部・東京都北区)の中村国生(くにお)事務局長(51)が指摘する。昨夏も、登校初日に学校へ行けず、ふらっとシューレに立ち寄った女子高校生がいた。「ここに来たり電話してきたりするだけでもいい。前に踏み出せているということだから。全面的に受け止め、話を聞きます」

 10代の子ども向けに、困り事別で相談先を検索できるサイト「Mex(ミークス)」を開設しているNPO法人「3keys(スリーキーズ)」(東京都新宿区)によると、今年のサイトへのアクセス数でも、月ごとは今月が一番多い。「それも直近の一週間が伸びている」という。

 ネットで若者の自殺防止を進めるNPO法人「OVA」(東京都新宿区)の伊藤次郎代表理事(33)は周りの大人に対し、「いつも以上に子どもの変化にアンテナを高め、『どうしたの』『大丈夫?』と声をかけてほしい。見守りが一番大事」とアドバイスする。

 「小山フリースクールおるたの家」(栃木県小山市)では、9月3日から7日までの日中、施設を無料で開放する。稲葉祐一朗代表(36)は「学校だけでなく、フリースクールも選択肢の一つだと知らせたい」と話している。