福島の野菜、首都圏の親子に無料で届けます コロナ禍で苦境の家庭を支援 農家でつくるNPOが募金呼び掛け
原価3500円分の食材を選ぶ
ナスにキュウリ、ジャガイモ、ナシ…。箱詰めされたのは、農家が丹精込めて育てた旬の味覚が中心だ。
1箱あたり原価3500円分の食材を選ぶ。アスパラガスなど店ではちょっと高めの食材も入れる。「子どもと歓声を上げました」と反響もあった。「鮮度がよくておいしいものを食べてほしい。体も気持ちも強くなって」と福島県二本松市の農家、斉藤登さん(61)は話す。
首都圏中心に290世帯に送付
このNPO法人は、「がんばろう福島、農業者等の会」。東京電力福島第一原発事故直後、斉藤さんら農家5軒が「風評被害を自分たちで克服しよう」と立ち上げた。当初はインターネットで地道に販売していたが、東京を中心に「福島を応援したい」という消費者に支えられ、直販にもこぎつけた。現在は県内の農家50軒超が参加している。
そんな中、新型コロナウイルスの感染が拡大。雇い止めや無収入…。暮らしへの影響が見えてきた4月、斉藤さんらは「できることをしたい」と、子育て中の生活困窮家庭に無償で農産物を送ることにした。協力関係にあり、困窮家庭の学習を支援しているNPO法人キッズドア東北(仙台市)などを介し、コロナ禍で家計状況が悪化した家庭を募った。5月から食材の宅配を始め、9月までに首都圏を中心とした約290世帯に送り終えた。10月以降も継続する。母子家庭が多く、職を失って収入10割減の家庭も多いという。
コロナ禍で、母子家庭の18%が「食事の回数減らした」
送料など活動原資は「農業者等の会」が運営する販売サイト「里山ガーデンファーム」を通じた1口1000円の募金と企業の助成金を充てている。募金と助成金は引き続き求めている。
コロナ禍中の母子家庭の食事については、NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」が7月、全国の約1800人の母親から回答を得た調査から、18.2%が1日の回数を減らし、49.9%が炭水化物のみが増えた、とある。
キッズドア東北の対馬良美さん(39)は「食料支援は、日持ちする缶詰やレトルトに偏る上、集積所に取りに行く形が多い。新鮮な野菜が家に届くのは喜びで、前向きになれる」と話す。
「お金がある人も貧乏な人も、同じように食べられる社会であってほしい」と願う斉藤さん。「本当は国が仕組みをつくってやることだと思うが、それまでは募金や助成金を集めて、続けていく」