性的虐待に遭った子ども、専門医の診察を受けたのは1割未満 神奈川県が児相と医療機関の連携で改善へ

志村彰太 (2024年3月21日付 東京新聞朝刊)
 神奈川県は、性的虐待の被害に遭った子どもの支援を充実させるため、児童相談所(児相)と医療機関が虐待対応の初期から連携する態勢をつくる方針を明らかにした。あわせて、児相の業務が適切に行われているかチェックする第三者評価も導入する。3月15、18両日の県議会で説明した。

「系統的全身診察」子どもに安心感も

 15日の神奈川県議会 予算委員会で公明党の委員は、性的虐待の被害児童を専門の医師が丁寧に診察する「系統的全身診察」がほとんど実施されていない実態を指摘。神奈川県の報告書によると、2017~2021年度に対応した性的虐待317件のうち、系統的全身診察をしたのは26件にとどまり、実施率は1割に満たなかった。

 系統的全身診察は、被害を客観的に把握する目的のほか、子どもに安心感を与える効果もあるとされる。委員は「本来なら全件で実施すべきだ」と提言。黒岩祐治知事は「対応の初期から連携する態勢づくりを進め、警察や保育施設、教育機関とも連携し、子どもをケアする仕組みを検討する」と答弁した。

欧米では「CAC」がワンストップ対応

 神奈川県などによると、欧米などでは性的虐待の被害者に対して、被害の聞き取りと系統的全身診察、心理的ケアをワンストップで行う仕組み「CAC(Children’s Adovocacy Center)」が整っている。県は取材に対し、「系統的全身診察の実施は性行為など重篤な事案を優先している」と釈明したが、「実施率がこれでよいとは思っていない。必要な場合は実施できるよう努力する」と述べた。

 また、18日の厚生常任委では、児相や一時保護所の業務を客観的に点検する第三者評価を2024年度から導入する。まず試験的に平塚児相で点検し、効果を見ながら他の児相にも拡大するという。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年3月21日