「日本はG7で最後尾だ」子どもの性被害対策 国内外から改善要望

坂田奈央 (2023年5月13日付 東京新聞朝刊)

表 G7各国の主な子どもへの性暴力被害者の声を政策に反映させる仕組み

 19日開幕の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を控え、子どもへの性暴力根絶に向けた議長国・日本の対策の遅れが指摘されている。当事者団体によると、日本は他の先進6カ国に比べ、被害者の声を政策に反映させる態勢が十分ではないという。国内外の当事者らは、サミットの議題に取り上げるよう訴えるとともに、日本の取り組み強化を求めている。

当事者の声が法や施策に反映されづらい

 「性暴力を受けた当事者の声が法律や施策に反映されづらい」。政府への要望書を提出した1人で写真家の石田郁子さん(45)は訴える。自身も10代の時、性被害を受け、当事者の実態に即していない政府の政策に疑問を抱いてきた。

 石田さんらによると、昨年G7議長国だったドイツでは、「サバイバー(苦しみを生き延びた人)」と呼ばれる被害者から選ばれた15人による政府の諮問機関「サバイバー評議会」や当事者の声を聞く調査会が設置されるなど、日本以外の6カ国では近年、当事者の声を政府に直接届け、政策に反映させる組織や仕組みづくりが相次いでいる。

 松野博一官房長官は12日の記者会見で「日本にも(関係省庁と民間団体が連携する)『子供の性被害撲滅対策推進協議会』があり、総合的活動を推進している」と強調。他の先進国にあるのは当事者が主体的に政府への意見を伝える公的機関だが、同協議会は必要に応じて当事者の声を聞く組織。当事者団体は、被害者の声が政策に反映されづらいとみている。

告発までに20年、30年… 時効撤廃を

 石田さんが設立した「Be Brave Japan」など4団体が2月、政府に提出した要望書では、ドイツと同様の諮問機関設置に加え、子どもへの性暴力の時効撤廃も求めた。今国会で性犯罪の公訴時効を延長する刑法改正案が審議中だが、石田さんは「子どもの性被害は記憶にふたをしたり、性暴力と気づかなかったりし、告発まで20年、30年かかる人が多い」と語る。カナダと英国には時効はないという。

 各国の当事者や支援者らでつくる国際団体「ブレイブムーブメント」は、日本を「包括的な行動計画がなく当事者との関わりが不十分」と厳しく評価。幹部は「日本はG7で最後尾だ」と指摘する。同団体は世界で少なくとも5人に1人の女の子、10人に1人の男の子が被害に遭っているとする。同団体や石田さんらは、広島サミットの声明に、被害根絶に向けた具体的な対応を期限付きで盛り込むことなどを求めている。

性犯罪と時効

 今国会で審議中の刑法改正案では、性犯罪の公訴時効は不同意性交罪が10年から15年、不同意わいせつ罪が7年から12年に延長される。18歳未満で被害を受けた場合、性被害と認識できるまで時間を要することを考慮し、18歳になるまでの年月を加算する。例えば18歳未満で不同意性交罪の被害に遭った場合、被害者が33歳の時点で時効になる。

13歳で性暴力を受け…公にできたのは47歳

 子どもへの性暴力根絶の取り組みを求めるため来日した、ドイツ政府「子どもへの性的虐待に関する調査会」委員マティアス・カッシュ氏(60)=写真、坂田奈央撮影=に話を聞いた。
写真

マティアス・カッシュ氏

ドイツ政府調査会 マティアス・カッシュ委員の話

 ドイツでは、サバイバー評議会や当事者の声を聞く同調査会などの仕組みで、被害者が闇の中で手探りで動く必要がなくなった。

 調査会は2016年以降5000人の当事者の話を聞いた。多くの声が届き、国全体で身近にある問題として危機感が共有されるようになった。

 私も13歳で性暴力を受けたが、47歳でようやく公にできた。被害は豊かな国でも貧しい国でも、家庭内でも教育現場でもどこでも起きている。G7議長国の日本がどのような態度を示すか注目している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年5月13日

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