広がる「子ども食堂」ネットワーク 志とノウハウを共有し、孤食や貧困の子を支える
品川区 子ども食堂17カ所の運営者ら140人が登録
「どういう食品なら使いやすいか」「食材以外であると便利なものは」
11月末、東京都品川区内で子ども食堂支援を希望する企業の担当者が、運営者のニーズを聞き取る会合が開かれました。主催したのは昨春できた「しながわ子ども食堂ネットワーク」。区内17カ所の食堂運営者やボランティア、支援企業や団体のメンバーら140人が登録しています。ネットワーク発足のきっかけは、区内で先駆的に子ども食堂を始めた運営者の「見学希望や寄付が増え、対応しきれなくなった」との声でした。
始まりは半信半疑「品川に貧困の子どもがいるの?」
品川区北品川の古民家でカフェを営む薄葉聖子さん(54)は、常連客から子ども食堂の話を聞き、「品川に孤食や貧困の子どもがいるのか」と半信半疑のまま2015年9月、週1回、「クロモンこども食堂」を始めました。店頭の看板とフェイスブックで前日に告知しただけなのに、初回は小学生が12人来たそうです。「小学1年の女の子が『普段は午後8時まで1人で留守番してる』って。生まれてたった6年の子どもが、とショックでした」と振り返ります。
始めて半年ほどは食材は全て持ち出しだったそうです。認知度が上がるにつれ、米や調味料などの援助が寄せられるようになりました。カフェにはエアコンがなく、最初の夏は子ども食堂を休んでいましたが、区社会福祉協議会の補助でエアコンを設置しました。
「資金援助よりネットワーク」区と社協がバックアップ
全国的にも、区内でも、子ども食堂が増えてきた16年秋。「やりたい人が見学に来るし、企業からも寄付などの問い合わせも増えて、1人では対応できなくなっちゃって」。薄葉さんは区と社協に「資金援助よりもネットワークが欲しい」と訴えました。ちょうど翌年度の予算編成の時期だったため、区子ども家庭支援課が予算要求の末、17年6月、社協が事務局となりネットワークがスタートしました。
寄付専用口座を設けて活動資金の一部を助成、寄付された食材を配分するほか、場所を提供したいという企業などと開設希望者とのマッチング、ボランティア希望者の紹介などを行っています。また、活動を広く知ってもらおうと年1回のフォーラムを開いたり、子ども食堂マップを作成しています。手続きが煩雑になりがちな助成金の申請は「簡素化しています。開設前から顔の見える付き合いをしているので、人柄や活動状況は分かりますから。書類作成の時間を子どもたちとの触れ合いに使ってほしい」と社協の西宮令子さん(39)。
薄葉さんは「自分が暮らす町で仲間や支援者が集まり、経験を共有しながら子どもたちの生活を見守る。最初ひとりでスタートしたときの不安や疑問は、いま声にして話し合えるようになってなくなりました」と笑顔で語ります。
マッチングも成功 自動車メーカー社員食堂が会場に
活動場所を求める地域住民と、場所を提供したい企業が結び付き、開設にこぎ着けた事例も出てきました。10月から毎月第2水曜日に開かれている「福栄みらい塾」は、社屋の分散で使用頻度が減った大手自動車メーカーの社員食堂とショールームが会場。地元の町内会長や役員、近くで高齢者福祉施設を運営する社会福祉法人職員らでつくる運営委員会が運営にあたります。町内会婦人部の女性たちが塩むすびと汁物を作り、囲碁将棋や英語ゲーム、折り紙などを教えるボランティアが、食事の前後にショールームの応接セットで子どもたちの相手をします。対象は小学生のみで、1食100円。
「このエリアでは大きなマンションが建ってファミリー層が増えています。共働きの人も多く、町内会では子どもたちの孤食を心配する声が上がっていました」と、運営委員会事務局の宮地恵美子さん(68)。社協を通じて自動車メーカーから5月に場所提供の話があり、喜んで受けたところ、厨房設備をそのまま使うだけでなく、まな板や鍋などの調理道具も新たに購入してくれたそうです。
北区、豊島区、杉並区、八王子市にもネットワーク
同様のネットワークは北区、豊島区、杉並区、八王子市などにもあり、ノウハウ共有や寄付食材の配布、衛生対策の講習会を行っています。
全国約350カ所が任意で参加する「こども食堂ネットワーク」事務局(渋谷区)の釜池雄高さん(41)は「場所や食材の総合的な提供だけでなく、同じ志を持っている人との交流が励みになっているようです。社協や行政がバックアップしてくれているというのは運営者にも、寄付する側にも安心感がありますよね」とネットワークのメリットを説明しています。
◇しながわ子ども食堂ネットワークのサイトはこちらです。
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