育児中のアーティストをどう支援する? 2歳児の母の画家・山口真和さんと学芸員が考えた

出田阿生 (2022年4月5日付 東京新聞朝刊)

作品の前で語り合う山口さん(右)と佐原学芸員=川越市のCAFE&SPACE NANAWATAで

 埼玉県川越市のCAFE&SPACE NANAWATAで開催中の画家・美術家山口真和(まな)さんの個展に合わせ、山口さんと埼玉県立近代美術館学芸員の佐原しおりさんによるトークイベントがあり、創作活動や育児中のアーティストへの支援について語り合った。

美術界にもハラスメントや負担の偏りが

 2歳半の子を育てる山口さんは「自分の多面性を作品に反映させるきっかけにもなっているが、どうしても制作時間が細切れになる」と吐露した。

 学芸員の佐原さんは「美術界でもハラスメントや育児などの負担が女性に偏る問題がある。問題意識は広がりつつあるが、具体的な克服方法は模索中」と説明。その上で「展覧会スケジュールひとつとっても、物理的な制約がないアーティストを基準に設定されている。業界全体で改善を考えなくては」と指摘した。

保育園送迎の途中で…制作のきっかけに

 会場では今年新たに手掛けた「花/flowers」が、ひときわ目を引く。墨を使った線描で、花というより大木を見上げているように見える作品だ。

山口真和さんの油彩画「花/flowers」

 山口さんは「子どもを保育園に送迎する道すがら、高さ5メートルほどに成長する皇帝ダリアが咲いていた。かよわい存在だと思っていた花に、自分が見下ろされる体験が痛快で、制作のきっかけになった」と語った。

 個展は24日まで。「何色と表現することができないような」(山口さん)という複雑な色合いと、どこか不穏な空気を漂わせる油彩画計9点が展示されている。