育休の2カ月で実感できた、赤ちゃんの世話の大変さ 産後うつを防ぐ「男性版産休」…”とるだけ育休”にならないために

長田真由美、熊崎未奈 (2021年7月9日付 東京新聞朝刊)

2カ月の育休を終え、生後4カ月の長女を抱く伊藤さん(本人提供)

変わるか男性育休〈下〉

 父親が育児のために休みを取りやすくする改正育児・介護休業法が6月、国会で成立した。女性に偏りがちな育児や家事を夫婦で分担することで、少子化に歯止めをかける狙いがある。男性の育休取得が進むと、企業や働き方、子育てはどう変わるのか。経験者や支援者の話から考える。

2カ月の育休「1人なら体が持たなかった」

 授乳におむつ替え、食事の準備、洗濯、買い物…。やることはいくらでもあった。三重県四日市市の会社員伊藤秋久さん(37)は「1人でやっていたら体が持たなかった」と振り返る。

 3年前、第1子となる長女の誕生に合わせ、2カ月間の「育休」を取った。里帰り出産した妻(33)が産後1カ月で自宅に戻ってきたタイミングだった。

 共働きで、もともと家事は妻と「半分ずつ」。育児のために休みを取るのは自然な流れだった。雇用保険から給付金が支給されるなど、育休中も収入の8割程度が保障されることは知っていたが、残っていた有給休暇を充てた。

妻と一緒に育児のスタートラインに立てた

 きつかったのが寝られないこと。長女は3時間おきに起きては泣いた。夜間は妻が授乳し、明け方から日中は妻を寝かせ、伊藤さんがミルクを与えた。あやしても泣きやまず寝不足でふらふらになることも。

 「あの2カ月があったから、妻と一緒に育児のスタートラインに立つことができた」としみじみ話す。

「男性版産休」できた背景に、産後うつ

 6月に成立した改正育児・介護休業法では、産後8週間以内に、父親が最大4週間の休みを取れる「男性版産休」が新設された。2回に分けることもできる。

 背景には、深刻な産後うつの問題がある。産後の寝不足やホルモンバランスの急激な変化が要因となって10人に1人が発症するとされ、ピークは産後2週間から1カ月だ。国立成育医療研究センターなどの分析によると、2015~16年に産後1年未満で自殺した女性は92人に上る。

 働き方のコンサルタント会社「ワーク・ライフバランス」社長の小室淑恵さん(46)は、この期間に男性が妻を支えることの大切さを指摘する。「夫に翌日も仕事があると思うと、寝不足でも妻は頼りづらい。まとまって休む必要がある」と話す。加えてこの時期に育児経験で差がつくと、以降も妻だけに負担がかかり続けることになりかねない。

父親の「産前教育」を充実させなければ

 政府は、今は8%未満にとどまる男性の育休取得率を、25年に30%にする目標を掲げる。法改正の一方で、懸念されるのが、休みは取るが家事や育児に関わらない「とるだけ育休」の増加だ。子育て情報サイト運営会社コネヒト(東京)などが19年に母親約500人に聞いたところ、育休中の夫が家事や育児を「1日2時間以下しかしなかった」という回答が3割にも。取得自体が目的化していることを浮き彫りにした。

 父親の育児を支援するNPO法人「ファザーリング・ジャパン」代表理事の安藤哲也さん(58)は、法改正に合わせ、父親に対する産前教育を充実させるよう訴える。市区町村が実施する両親学級は、抱っこやおむつのあて方といった技術の習得が中心。産後の母親の心や体の変化、新生児の不規則な生活リズムなどに関する内容が少ないことが「とるだけ育休」の一因になっているという。

 安藤さんは「育休は休みでなく、父親になるための修業期間」と強調する。キャリアの中断など職場を長く離れることによる影響を心配する人は少なくない。しかし「夫婦でうまく分担できて家庭が安定すれば、仕事への集中力も上がる」と取得のメリットを話す。

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