なぜパパは10日間の育休を取れないのか? 体験した父親たちが3月に本出版
「育休取れるよ」を断っていた
「上の2人の子の時は、自分の中に育休という選択肢はなかった」。小学校教員の成川献太さん(34)=広島県尾道市=は振り返る。4歳と3歳、昨年6月に生まれたゼロ歳の男児3人のパパ。育休や共働きでの子育てを考えるコミュニティー「ikumado(イクマド)」のメンバーで、本を作ることを企画した。
三男誕生の2カ月後から今年7月まで1年間の予定で、初めての育休中。次男が生まれた時、「育休を取ることもできるよ」と勤務先の学校長から声を掛けられたが、断った。担任を途中で代わることへの抵抗感が強く、男性教員の取得例も知らなかった。だが今回は、妻の負担増を分かち合う必要があると考えたほか、経験の幅を広げたいと取得を決めた。
女性たちのモヤモヤに気づいて
育休開始1~2カ月は、同じく育休中だった幼稚園教諭の妻以外の人と話すことがなかった。「目標や達成感がなくなり、世間から取り残されていると感じた」と成川さん。一方で気付きもあった。「(女性が子育てを理由に昇進などの機会から外れる)マミートラックやキャリアの断絶、復職に向けた不安など、多くの女性たちのモヤモヤとはこれだったのか」
男性の育休取得率は増加傾向にあるが、まだ7%余りにとどまる。出産間もない時期、母親に育児負担が偏ると、産後うつのリスクが高まることも知られるようになり、国は「男性版産休」制度の導入も目指している。子の出生後8週間以内に休みやすくするため、企業に該当社員への取得の働き掛けを義務付けることなどが主な内容だ。
「職場の評価やしわ寄せが…」
成川さんが男性の友人や知人に聞くと、職場の評価や同僚に仕事のしわ寄せがいくことへの心配、職場に戻りづらいといった不安など、職場環境の問題で取得をためらう人が多いという。「男性の育休取得が、制度が整った大企業で働き環境に恵まれている人や、育児や家事に積極的な『意識の高い人』だけではなく、社会の中で当たり前のものになっていってほしい」
自分も何かしたいと考えたのが、育休を身近に感じられる情報発信。イクマドで執筆を呼び掛けると、企業で部下を持つ管理職や看護師などの専門職、学習塾に勤務する人など30代を中心に約10人が集まった。
ジェンダー平等への最重要課題
本の仮タイトルは「なぜパパは10日間の育休を取れないのか?」。育休の意義を業務用の企画書で上司にプレゼンした人、「男性初」を実現するために会社内の制度づくりに奔走した人、夫婦で話し合い、夫は育休を取らずに育児の負担を分け合う形を選んだケースなど、多様で具体的なエピソードが集まりそうだ。
一定の応援者を集めることを条件に、社会課題の解決をテーマにした本の出版をサポートする「マスターピース」(東京)から出版予定。応援者は10日余りで目標の300人が集まり、3月ごろの完成を目指す。イクマド代表の千木良(ちぎら)直子さん(49)=東京都大田区=は「働きながら子どもを育てることでのジェンダー不平等を取り払うために、パパの育休は最も重要。多くの人に手に取ってもらえる本にしたい」と話す。
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