新制度「男性の産休」 産後うつの多い生後8週間にパパが育休、企業の働きかけを義務化 政府が関連法案を提出へ

(2021年1月4日付 東京新聞朝刊)
 厚生労働省は、男性の育児休業取得を促進するため、子の出生後8週間以内に休みを取りやすくする「男性版産休」の制度案をまとめた。企業に対象社員への個別の働きかけを義務付けることなどが特徴。菅義偉首相の思い入れが強い政策の一つで、政府・与党は関連法案を今月召集の通常国会で成立させ、2022年度からの実施を目指す。実際に取得率が高まるかどうかは企業側の意識や環境によるところが大きい。 

2回に分けて取れる 申請期限も変更

 「産後、日中も夜間の対応も全て1人で育児を担った。夫に協力してもらえていれば」。愛知県の30代の女性は振り返る。睡眠不足と過労が原因で産後うつを発症。職場復帰できなくなり、見込んだ収入が得られない上に、医療費や、休養のために子を預ける費用がかさんだという。

 厚労省の調査によると、産後2週~1カ月の間にうつを発症する女性が多い。制度案では、子の出生後8週間に配偶者の出産時と退院時など2回に分けて育児休業を取得できることとした。取りやすさを重視し、取得申請期限を現行の「1カ月前」から「2週間前」までに短縮。企業には対象者への制度周知と意向確認を義務付ける。

図解 男性の育休取得を促す新制度の主なポイント

 制度案を議論した労働政策審議会(厚労相の諮問機関)では、使用者側から「申請から取得までの期間が短い」「手続きが煩雑になる」などの反対論も出た。政府は人手不足が深刻な中小企業に対し、代替要員の確保を支援する方針を掲げ、理解を取り付けた。

国家公務員で先行 85%が「1カ月以上」

 男性の育休取得推進を政府に提言してきたコンサルタント会社「ワーク・ライフバランス」の小室淑恵社長は、男性版産休を「長年1ミリも動かなかった中で、大転換と言える」と歓迎。配偶者の産後うつが重症化した場合、子への虐待や自殺につながるリスクがあり、産後8週間に注目した意義は大きいと指摘する。

グラフ 男性育休取得率の推移

 男性版産休は、子育て政策の充実に重点を置く首相が主導。昨年12月の講演で「少子化問題を解決するには『イクメン』が当たり前になることが不可欠だ」と必要性を強調した。政府は国家公務員の一般職などで男性育休取得の取り組みを先行させ、昨年4~6月に子が生まれた対象職員の約85%が上司と共に1カ月以上の取得計画を立てた。

職場の「雰囲気」が壁に 意識改革を

 だが、一般の中小企業まで広く普及させるには、休みを取りにくい職場の雰囲気が壁になってくる。

 連合が昨年10月に実施した20~59歳の働く人対象の調査で、育休未取得の男性に理由を聞くと「代替要員がいない」(53.3%)が最多だった。小室氏は「属人的な仕事の進め方をしている企業は、これを機に見直すべきだ」と提案する。

 ニッセイ基礎研究所の久我尚子主任研究員は「新制度で重要なのは、トップが旗振り役になるなど会社全体で意識を高めること。そうでなければ単なる周知になりかねない」と話す。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年1月4日

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  • 匿名 says:

    電車内で東京都による育休取得促進の広告がありました。パパコース!ママコース!って、ここにまで助成金の額で差がつけられている(男性の方が大分多い)んですが、どういう基準なんでしょう?ママたちが現状、充分育休取れているならいいですけど。

      
  • 匿名 says:

    私も産休義務付けに賛成です。同調圧力の強い日本企業で産休取得を推奨しても結局不文律に潰されるだけではないですか?育児参加への意識が変わっていない人が多いのだから少し推奨したくらいで普及すると思えません。フランスぐらい男性の少子化対策や育児参加教育に力を入れてほしいです。

      
  • 匿名 says:

    申し出、ではなく、国から企業が育休を取ることを義務化させなければ意味がない。また、それによって休んだ分で職場で評価差別を生んではいけない。サラリーマンの男性は職場の評価を気にする。むしろ休んで少子化に貢献したことを褒めるくらいでなければ。子供が大きくなってしまった人は孫育休か地域の保育園に2週間×2回(毎年または2-3年ごと)の支援活動にでも国が義務化しなければ、電車・バス・レストランなどの公共の場で赤ちゃん・子供の声を不快だとしたうちし続ける大人、老人が増え続けるだけであろう。学生は学校の職業体験などで老人介護施設に行くことがあるのに、なぜ大人が保育園・幼稚園にサポートに表立って入ることがないのだろうか。手始めに国会議員さんや国家公務員等、税金で収入を得ている人たちから始めては。

      
  • 匿名 says:

    育休をとらない男性は「職場の雰囲気」のせいにする。同じくらい責任があって忙しい仕事をしている女性がそうしないにも関わらず。「職場の雰囲気」よりもまずは「親としての責任感」という人間としての本質を男性にも持たせてやる必要がある。「男が仕事より家庭を優先したらかっこわるい」ということと「男は責任を果たすより世間体を気にしておけば良い。泥臭い仕事をして真の責任を果たすのは女だけで良い。」という価値観を壊さなくてはいけない。

      
  • 匿名 says:

    出産をした親御さんが育休を取りやすくするために、親御さんに制度を周知したり、会社側にも育休を取りやすくする雰囲気を作ることも大切ですが、それ以上に残された社員に育休を取得した方の仕事のしわ寄せがいかないようにすることが最も大切だと思います。

    出産回数は家庭ごとに違うし、出産をしない人生を選ぶ人もいるので育休はけしてお互い様ではない。だからこそ、育休を取得した社員がいる場合はAIを活用したり、会社全体の仕事量を減らして、けして残された社員の仕事量が増えることがないようにするべきだと思う。

    どうしてもそれが無理な場合は、育休社員の仕事をフォローした人には確実にフォロー手当を与えることが必要だと思う。いくら育休制度が拡充しても、残された社員にしわ寄せがいく状態では、育休の取りにくさは改善せず、制度だからと強制的に育休をとらされて肩身の狭い思いをするくらいなら子供は産みたくないと余計に少子化が進むと思う。

    また、そもそも子供のいる社員のみが長い給料ありの休み(育休手当)を取れること自体がおかしい。出産するしないに関わらず、レジャー目的でも育休相当の年単位の長い給料ありの休み(レジャー手当)をとって良い権利を全ての社員に与えないと不公平である。

    そして、子供を産まない選択をした社員こそ、育休の代わりにレジャー目的で長い有給を取得しやすい環境になれば社員の生き方の違いによる不公平感のイザコザは起きず、生き方の違う社員同士もお互い協力的になり、それにしたがい子供を産みたい人は産みやすい環境ができて少子化問題も、社員の人生の質も改善すると思う。

      

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