都政の課題:スクールカウンセラー雇い止め  9年働いた女性、再任用制限で続けられず…「卒業するまでいてほしかった」

畑間香織 (2024年7月6日付 東京新聞朝刊)

東京都のスクールカウンセラーだった女性。公募試験の結果、2024年度は採用されなかった=東京都内で(川上智世撮影)

 東京都の非正規公務員として働くスクールカウンセラー(SC)250人が、今年1月に「雇い止め」の通知を受けた。出産後まもなくSCの職を失った女性(36)は「都が大量リストラをしたことは怖い。次世代が不安になる出来事」と話す。小池都政の3期目がスタートした。当事者は、SCの雇用安定や、生徒らが安心して相談できる環境を望む声を上げた。

1年ごとに任用 再任用は4回まで

 「卒業するまでいてほしかった」「いなくなったら困る」。都SCの公募試験で不合格だった女性は、3月でいなくなると生徒たちに伝えると、このような言葉をかけられた。雇い止め撤回を求めるオンライン署名に協力する保護者もいた。2015年度から働き、同時に3校を任されたこともあった。「自分が大事に築いた環境を終わりにしないといけないのは、苦しかった」と振り返る。

 都SCは1年ごとに任用され、都教育委員会は公募によらない再任用の回数を4回までと規則に定める。女性は23年度に更新の上限に達したため、新しく職に就くことを希望する人と同じ公募試験を受けなければいけなかった。都教育庁の徳田哲吉職員課長は公募にかける理由を「公務を希望する人に広く機会を与えるため」と説明する。

「再任用の制限」がない自治体も

 総務省によると、公募によらない再任用の回数に制限を設けるかは自治体が決める。制限がない自治体も一部あり、このうち世田谷区は理由を「職員の意欲や能力をさらに活用できるようにするため」とし、文京区は「職員の雇用の安定と、労働組合による要望」と説明する。所属長が勤務実績を毎年評価して再任用を判断し、現職を一律公募にかけることはしない。世田谷区は、再任用しない職員には人事評価を開示し、不服を申し立てられる制度の説明をするという。

 これまで、いじめや虐待で悩む生徒らを臨床心理士の資格を持つ専門家の立場から支援してきた。やっと心を開いた生徒らが相談していたSCがいなくなることで声を上げにくくなる影響を懸念する。「雇い止めが起きないようにしてほしい」。そう願っている。

東京都スクールカウンセラーの「雇い止め」問題

 非正規公務員の新しい人事制度(会計年度任用職員制度)が2020年度に導入されたことを受け、19年度以前から勤務していた人が24年度に契約更新して働くためには公募試験に合格しなければならなくなった。都教育委員会などによると、契約更新のため試験を受けたのは1096人。1月時点で、補欠に当たる補充任用や不合格で24年度に採用されない「雇い止め」は250人に上った。新規応募者783人のうち合格者は441人。更新回数の制限に達しないため、公募を受けずに契約更新をしたのは420人だった。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年7月6日