さようなら、キッチンばさみでのセルフカット〈古泉智浩さんの子育て日記〉56

(2024年9月25日付 東京新聞朝刊)

粘土で遊ぶぽんこちゃん。美容院の後です

外見を気にするのかしないのか

 小1のぽんこちゃんは髪が長くて、肩甲骨くらいまであります。細く癖っ毛で、めったにとかさないため、時々くしを当てると、べたべたに固まっていて引っかかります。縛ることも嫌うのでボーボーです。

 女の子だとしても、外見ばかりに全力を集中するタイプにはなってほしくないと常々考えていますが、あまりにひどい。服も変です。僕に選べと言うので選ぶと、「それは嫌だ」と違うものを選びます。その結果、柄物に柄物を重ねるようなガチャガチャした色合いで全身を包みます。好みはあるものの、それほど気を使うタイプではないようです。

 夏を過ぎましたがまだまだ暑いです。前髪が目に入りそうで、ついでに背中に伸びた髪も切ることにしました。美容院に行くよう勧めますが、「怖い」と言って行きたがらず、僕が時々切っています。今回も風呂上がりに、床に新聞紙を広げて切り始めました。ちょくちょく頭を回転させて、こちらを見ようとします。「ちゃんと前を向いていないと変になるよ」。そのたびに言います。僕も素人で、キッチンばさみを用いて適当に切ります。大体、肩の高さになるようにしました。

 お風呂場で体についた毛を流し、ぬれた体を拭きながら、鏡を見たぽんこちゃんが「しっぱいだ。がっこうにいきたくない」と言いました。そのうちポロポロ涙を流して泣き出しました。「そんなに失敗してないよ」「かわいいよ」と言っても聞かず、すごく嫌がっています。

怖がっていた美容院に大満足

 実際、過去にはもっと変な髪形にしてしまったり、ぽんこ自身が頭頂部の毛や前髪を切ったりしたこともあります。そんなとんでもない髪形であっても、何も気にせずケロリとしていました。また、寝起きでよだれの白い筋が口の周りにあるので顔を洗うように言っても嫌がって、しつこく言うと激怒し、そのまま学校に行ってしまうこともあります。

 気にしていないようで、それなりに外見に対する意識は生まれていました。「はなこさんみたいでがっこういけない」。トイレの花子さんに似ていて恥ずかしいと、何度も繰り返し言いました。とても申し訳ない気持ちになりました。だから初めから美容院に行けばいいと言ったのに、嫌がるからこうなっちゃうんだよ。

 翌日は嫌がりながらも学校に行き、夕方にママと美容院に行ってきちんと整えてもらいました。「これならがっこうにいける」と言います。僕がぽんこちゃんの髪を切るのは今回が最後です。

古泉智浩(こいずみ・ともひろ)

 漫画家。養子の10歳男児うーちゃんと、6歳女児ぽんこちゃんを育てる。