「性教育、高校では遅い」 人権問題として授業実践を 東京都議に批判された足立区立中教諭
柏崎智子 (2019年2月19日付 東京新聞朝刊)
人権教育の一環として性の学習に取り組んでいる東京都足立区立中学校の女性教諭(60)が17日、区内で市民団体が開いた講演会で、授業のねらいや思いを語った。「授業を行うと生徒が変わる。ほかの学校にも広がってほしい」と訴えた。
都議の批判に世論「子の現実を見れば、むしろ教育は必要」
この教諭の授業については昨年3月、性交や避妊を教えることが「学習指導要領を超え、不適切」と一部の都議が問題視。しかし、子どもたちの現実を見ればむしろ必要という世論が高まり、都も保護者の同意を得ることなどを条件に実施も可とする考えを示した。
女性教諭は、28年前から性教育に携わり、現在は大学教授らとともにカリキュラムを作成している。
中学生、性への関心は高いのに知識や情報乏しく
1年生で科学的に生命の誕生を学び、自分と他人のかけがえのなさを感じてもらう。その後、社会的に刷り込まれた「女らしさ、男らしさ」、性の多様性などを学びながら「性の問題は人権問題」だと理解する。卒業間近の3年生で、性行動や、束縛や支配ではない恋愛関係を考えさせる。
授業の前に、避妊や人工妊娠中絶についてクイズ形式でアンケートすると、ほとんど不正解。一方で3割強が「中学生でも同意すれば性交してよい」、4割強が「高校生ならよい」と答える。性への関心は高いのに自分を守る情報がない。「高校生になってから教えるのでは遅いんです」
生徒「学べてよかった」 保護者「家庭でできないから助かる」
授業後、性交してよいと考える生徒の割合は減る。感想文には「正しい知識を学べてよかった」などと書く生徒が多いという。
授業内容は事前に保護者に知らせている。苦情はなく「家庭でできないからありがたい」との声が多いという。教諭は「子どもたちの性の安心安全のために、この教育がいろんな学校で行われるようになってほしい」と語った。