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足立区の中学の性教育 避妊や中絶…都議が「不適切」と批判したのは妥当か?

川田篤志、柏崎智子 (2018年4月5日付 東京新聞朝刊)
  東京都足立区の中学校で行われた授業を巡り、都議が都議会で教員らを名指しして「不適切な性教育」と批判したことに、波紋が広がっている。都教育委員会は「課題があった」として区教委を指導する方針だが、専門家らは教育現場の萎縮を招くと懸念。判例では教員の広い裁量を認めているとして、教育への不当介入だと訴えている。 

学習指導要領では「中絶は高校で扱う」

 授業は3月5日、3年生を対象に総合学習の時間で行われた。「自らの性行動を考える」という人権教育の一環で、教育関係者や保護者らにも公開された。

 関係者によると、授業では、若年層の望まない妊娠が貧困につながるなど社会問題化していることや、高校1年生の中絶件数は中学までの総数の3倍に跳ね上がる実態を紹介。「産み育てられる状況になるまでは性交は避けるのがベスト」と強調した上で、避妊方法や中絶できる期間が法律で決まっていることなど、実用的な知識を教えたという。

 自民の古賀俊昭都議は同16日の文教委員会で、校名や校長名、教員名を挙げ「発達段階を無視」した「不適切な性教育」だと問題視。都教委の宇田剛指導推進担当部長は、性交や避妊、人工妊娠中絶という言葉を使って説明した点に「課題があった」と答弁した。性交の言葉は保健体育の学習指導要領に示されておらず、避妊と人工妊娠中絶は高校で扱う内容だとの認識を示した。

写真 文科省の学習指導要領解説では、性感染症予防のため、性的接触しないことや、コンドームの有効性に触れるよう求めている

文科省の学習指導要領解説では、性感染症予防のため、性的接触しないことや、コンドームの有効性に触れるよう求めている

「教育への不当介入に強く抗議する」

 学習指導要領や文部科学省の説明では、中学1年で「男子では射精、女子では月経が見られ、妊娠が可能となること」を教えるが、性交は取り扱わない。一方、学習指導要領解説などでは、3年時に「(エイズなどの)感染を予防するには性的接触をしないこと、コンドームを使うことなどが有効であることにも触れるようにする」としている。

 性教育を実践する教職員や大学教授らでつくる「“人間と性”教育研究協議会」は今月6日、「都議と都教委の教育への不当介入に強く抗議する」との声明文を発表する。

 会の代表幹事で、国内外の性教育に詳しい立教大の浅井春夫名誉教授(66)は本紙の取材に「中学生までに性や避妊の知識を教えるのは国際標準」と指摘。古賀氏が教員らを名指ししたことを「現場の裁量権を踏みにじり萎縮を招く」と訴え、都教委にも「政治介入から教員を守るべき立場を放棄した」と批判する。

「教育者に広い裁量」の判決が確定

 古賀氏ら都議3人は2003年、都立養護学校(当時)を視察した際、人形などを使った性教育の授業を「感覚がまひしている」などと批判したことがある。都教委から学習指導要領を踏まえない不適切な教育と厳重注意を受けた教諭らは05年、都議3人や都教委などに対し、損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

 地裁は「教育に対する不当な支配」と認め、都や都議3人に損害賠償を命じた。東京高裁も地裁判決を支持した上で「学習指導要領の内容は膨大で一言一句に法的拘束力があるとはいえず、教育者に広い裁量が委ねられている」とし、判決は確定している。

 区教委の担当者は「総合学習の時間で人権教育の題材としては適当だった」としつつ「性教育に偏りすぎていたので改善の余地はある」と説明。古賀氏は本紙の取材に「性教育は学習指導要領に準拠すべきだ。行政をチェックするのが議員の使命で不当介入との指摘は当たらない」と話した。

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