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「10年後に泣かないために」都教委、指導要領を超えた性教育 中学生にモデル授業 

(2019年2月4日付 東京新聞朝刊)
 中学生にどこまで性教育をするべきか。東京都教育委員会は昨秋から、学習指導要領の内容を超えた性教育のあり方を検討するため、産婦人科医を講師にモデル授業を始めている。「10年後に泣かないために、正しい知識と判断力を身に付けて」と呼びかける授業をのぞいてみた。

講師は産婦人科医「生と性の違いは?」「自分も相手も大事に」

 1月下旬、八王子市にある都立南多摩中等教育学校のホールに、159人の3年生全員が集まった。講師は渋谷区の宮益坂メリーレディースクリニック院長の長岡美樹さん。「今、話しておきたい大切なこと」と題して30分講演した。

 「今生きている意味の『生』と、未来につながる『性』の違いを考えてほしい」。人間は子孫を残すために、女性の胎内で受精する仕組みを進化させてきたことや、中絶できる時期が限られていることを紹介。

 さらに、性交相手の過去までは分からないため、常に性感染症のリスクがあることや、会員制交流サイト(SNS)で性的な画像を送ると後から削除できないことを伝えた。「自分も相手も大事にしてほしい」と呼び掛けた。

「正しい知識を持ってほしい」と性教育のモデル授業に取り組む長岡美樹さん=東京都八王子市で

興味津々 任意参加でも中3全員が出席

 学習指導要領では、思春期の子どもに排卵や受精の意味を教える一方で、「妊娠の経過は取り扱わない」として性行為や避妊は教えない。モデル授業には要領を超える内容が含まれるため、都教委は各家庭に参加が任意であることを伝えたが、全員が出席した。

 生徒たちは真剣そのもの。意見発表で男子生徒は「コンドームを使うことは性感染症にならないためのマナーだと分かった」、女子生徒は「『生』は個人の生命、『性』は心という字が入り、自分と相手の愛が含まれている」と、冒頭の長岡さんの問いに自分なりの答えを返していた。

触れない家庭も 「学校にいる間に正しい知識を」

 子どもたちはいま、アダルトサイトなどで偏った性情報を簡単に入手できる環境にあり、望まぬ妊娠やデートDVなども危惧されている。講演後、長岡さんは取材に「性について熱心に教える家庭もあれば、触れない家庭もある。学校にいる間に正しい知識を持ってほしい」と述べた。

 都内では昨年3月、足立区の中学校が性交や避妊など学習指導要領にない内容の性教育をしたとして、古賀俊昭都議(自民)が「不適切だ」と問題視。性教育のあり方が議論を呼んでいた。都の教育委員からは「萎縮せず積極的にやるべきだ」との意見も出ていた。

公立中校長の46%「指導要領超えた指導が必要」 生徒の97%「役に立つ」

 都教委は昨年8月、公立中学校長を対象に性教育の調査を実施。生徒が正しい性知識を身に付けているかは、計47%が「そう思わない」「あまりそう思わない」と答えた。要領にない内容の指導も、46%が必要性を認めた。

 都教委は昨年11月からモデル授業を始め、2018年度は5校で、19年度は10校で予定している。中学校向け「性教育の手引」も改訂作業中で、3月までに公表する。手引には、要領の範囲を超えた発展的な内容を盛り込む予定だ。

 モデル授業を受けた生徒や保護者の感想は好意的。新宿区の中学校で昨年11月に行われた授業では、生徒の97%が「授業の内容が役立つ」と答えた。保護者の意見も「授業を話題にして子どもと話してみたい」「性を学校で習うことは大切」「妊娠の重み、命の尊さが伝わった」などで、否定的な意見はなかった。

学習指導要領

 小中高校で教えなくてはならない最低限の学習内容を示した教育課程の基準。文部科学省が策定し、10年ごとに改定される。中学の保健体育では「受精・妊娠を取り扱うものとし、妊娠の経過は取り扱わない」としており、性交や避妊などの指導は必須ではない。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年2月4日