<記者の視点>政治部記者の育休体験 パパが得たのは自覚と「夫婦の共感」だった

川田篤志 (2019年9月10日付 東京新聞朝刊)
 6月末に生まれた長女のため、入社12年目の私(38)は7月下旬から1カ月間、育児休業し、共働きで産休・育休中の妻(33)とともに初めての育児に奮闘した。厚生労働省が6月に公表した「2018年度雇用均等基本調査」によると、男性の育休取得率は6%にとどまる。育休を阻むさまざまな葛藤の解消に役立てればと願い、自らの体験を紹介する。

川田篤志記者

「出産のダメージは交通事故並み」に衝撃受け決意

 「妊娠・出産に伴う母体のダメージは交通事故に遭うのと同じ」

 妻の通院先で受け取った育児の指南書を読み、衝撃を受けた。産後6~8週間の産褥(さんじょく)期に、子宮や骨盤、ホルモンバランスの乱れなどの心身の調子をしっかり回復することが、その後の子育てにも大切だと知り、育休を決意した。

 実際の子育てでは、長女は昼夜を問わず、2、3時間ごとに泣いておっぱいを欲しがった。その都度母乳を与える妻と約束し、私も午前5時ごろには起床。部屋や風呂の掃除、食事づくりなど家事は私が担当し、1日約10回のおむつ替えや抱っこによる寝かしつけ、1日2回の沐浴(もくよく)を妻と分担した。

赤ちゃんは気まぐれ 夫婦で頼り合って乗り越えた

 生後1カ月ごろの長女は生活のリズムが一定でなく、母乳の合間になかなか寝てくれずに苦労した。抱っこであやし、30分かけてようやく寝たのでベッドに移すと、とたんに泣きだすこともあった。

 赤ちゃんは気まぐれだ。パパの抱っこにご機嫌の日があれば、終日嫌がる日も。妻も同じ感覚があり「相性が悪い日は抱っこは任せた」と互いを頼った。育休を取ったからこそ夫婦で共感できた。

 妊娠中から胎児の成長を感じて母親になった妻と違い、出産に立ち会っても父親としての実感は薄かった。それが育休明け直前に長女が生後2カ月になり、笑いかけると笑みを返してくれるようになった。「この子のために頑張らないと」と自覚が芽生えた。

収入減や選挙を避け1カ月取得 上司や先輩も後押し

 厚労省が三菱UFJリサーチ&コンサルティングに委託し、今年2月に公表した「労働者調査」によると、男性が育休を取らない理由は「収入を減らしたくなかった」「職場が育休を取得しづらい雰囲気だった」が上位に挙がる。

 私の場合、長期間の育休取得による収入減を避けるため期間は1カ月間とした。妻の出産直後の6月末ではなく、7月21日の参院選後に取得したのも、職場への影響を考慮し悩んだ結果だ。一方、同じ政治部には2カ月間の育休を取った先輩の男性記者がいた。上司も背中を押してくれた。育休を取りやすくするには、職場や社会の理解が欠かせない。

 来春には妻も仕事に復帰する予定で、長女を託児施設に預け、病気の時は親に協力してもらうつもりだ。共働きでの育児に不安は尽きないが、育休が夫婦の絆を深め、今後の苦難を乗り越える糧になったと信じたい。男性の育休が当たり前の社会になるよう発信を続けたい。