乳幼児期の「肌の保湿」が大事! アトピーや食物アレルギーのリスク軽減…「妊婦の食生活が原因」は誤りだった
赤ちゃんの薄い皮膚 バリアー機能補って
「赤ちゃんは皮膚が薄いので、バリアー機能を補うための保湿が大切です」
昨年12月、神奈川県伊勢原市で開かれたスキンケア講座。赤ちゃんを連れた父母ら24人に、国立病院機構神奈川病院アレルギー科医師の渡辺博子さん(48)が訴えた。
皮膚を洗う時、洗浄力を高め、刺激を少なくするためせっけんの泡を使う。渡辺さんらは、ビニール袋に入れた液体せっけんを上手に泡立てる方法も教えた。ステロイド軟こうも「短期間で集中的に塗り、外見が正常になったら保湿に移行する」などと指導した。
保湿剤でアトピーの発症が30~50%低下
新生児期から保湿剤を塗ることで、アトピー性皮膚炎の発症リスクを30~50%抑えられる-。国立成育医療研究センター(東京)の大矢幸弘アレルギーセンター長(62)らが2014年に発表した研究成果だ。同センターで生まれた赤ちゃんのうち、保湿剤を塗る59人と塗らない59人で生後8カ月の発症率を比べた。
また同センターの新生児1500人の追跡研究では、生後1~2カ月でアトピー性皮膚炎も含めた湿疹を発症した子は、湿疹がない子に比べて7.28倍も食物アレルギーになるリスクが高いことが分かった。
湿疹や乾燥肌だと皮膚のバリアー機能が低下、アレルゲンが侵入しアレルギー反応を示す「経皮感作」が起きやすくなる。大矢さんは「保湿剤を塗ってもアトピーになる人はいる。完全には防げないが、きちんとしたスキンケアで発症リスクを減らせる」と話す。
「離乳食で卵を避けても、予防効果なし」
この研究から、大矢さんは「母親が妊娠期や授乳期に食べた食物が原因で子がアトピー性皮膚炎や食物アレルギーになるのではない」とも指摘する。
大矢さんらは、乳幼児に多いとされる卵アレルギーも調べた。アトピー性皮膚炎の新生児のうち、生後6カ月から加熱卵粉末(50ミリグラム)を食べた60人と、同量のカボチャ粉末を与えた61人を比較。卵を食べていた子の1歳時の卵アレルギー発症率は8%で、カボチャ粉末を食べた子の同発症率38%を大きく下回った。大矢さんは「離乳食で卵を食べ始めるのを遅らせることにアレルギー発症予防の効果はない、と科学的に証明されたのは初めて」と話す。
誤った情報に振り回されないで…厚労省がQ&A公開
厚生労働省研究班(代表・足立雄一富山大大学院教授)の全国調査では、乳幼児健診などで「アレルギー疾患の指導をしている」と回答した保健所・保健センターは8割。4割は妊婦にも指導していた。
調査では、保護者が誤ったネット情報や知識に振り回されている状況も判明。厚労省は2019年3月、アレルギー発症予防やアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支ぜんそくなどへの対応や災害時の備えなどをQ&A方式でまとめた保健師らに向けた「保健指導の手引き」を発行した。
「母乳栄養の方がアレルギーになりにくいか」「食物アレルギー予防のため離乳食開始を遅らせる方がいいか」などの質問に答えており、子育て中の父母にも参考になる。日本アレルギー学会の「アレルギーポータル」で無償でダウンロードできる。