「お父さんは育児をしていますか」1歳6カ月健診の質問、なぜ”母親が主体”の前提なのか? 厚労省に聞いてみた
「積極的に育児している父親の割合」を調べるため
厚生労働省によると、アンケートは、育児不安の軽減や小児保健医療水準の向上などを目的とした国の「健やか親子21」の指標に合わせ、同省がつくった。乳幼児健診の実施主体である都道府県や政令市、特別区の母子保健担当部署に通知され、結果を各都道府県が取りまとめて厚労省に報告する。
指摘された設問は「積極的に育児をしている父親の割合」を調べるためのもの。両親の喫煙率や、子どもを虐待していると思われる親の割合を調べる設問もある。
厚労省「2015年からの10カ年計画」 当初の指標
投稿した東京都大田区の会社員小笠原知美さん(35)は、夫の祥さん(35)と1歳8カ月の長男との3人暮らし。祥さんは平日、保育園の送りのほか、夜9時ごろの帰宅後に掃除や洗濯物干し、休日は家事のほぼ全てをこなす。小笠原さんは「家事・育児の6、7割を夫が担当している」と言い、祥さんが健診に行ったら「この問いにどう答えればいいのか」と首をひねった。
厚労省母子保健課の担当者は10カ年の第2次計画が2015年度から行われており「当初の指標を変えられないし、計画途中で設問の表現を変えると統計としてゆがみが生じる」と説明。その上で「まだまだ女性の方が子育てを担っている状況もある」と理解を求めた。
男性の育児参画が進み、保健師からも疑問の声
ただ、アンケートで「(父親は育児を)よくやっている」と答えた人の割合は、2013年度の47.2%から2017年度は59.9%に上昇している。
男性の育児参画が進む中、自治体の保健師などから「『子育ては母親が主体という聞き方はどうなのか』『父親が健診に連れてきていることもある』という意見をいただいている」と担当者は話した。
東京23区では独自の問診票も 「主に育児をしている方」「パートナー」
東京23区の自治体の中には、1歳6カ月健診時のアンケートの際、独自の問診票で親や周囲の育児の関わりを問う区もある。
荒川区は「主に育児をしている方におたずねします」と前置きした上で「子育てや家事を手伝ってくれる人はいますか」と質問。「母・父・祖母・祖父・その他(自由記述)」から選んでもらう。
渋谷区は「(育児について)悩んでいる時に相談や、協力してくれる人はどなたですか?」との質問に対する選択肢のうち「配偶者」の部分を8年ほど前に「パートナー(配偶者)」に置き換えた。ひとり親家庭や未婚の人を想定して見直したという。渋谷区では2015年に全国初の同性パートナーシップ条例を制定。担当者は「条例にも合致しているので引き続き同じ選択肢にしている」と説明する。
「子育てをどのように分かち合っていますか」と聞けばいいのでは
◇恵泉女学園大学長の大日向雅美さん(写真)の話
子育ては、夫婦で分かち合うもの。女性は、相手に何をしてくれるかを望んでいるのではなく、子育ての同志でありたいと願っている。1歳6カ月児の健診アンケートでは「子育てをどのように分かち合っていますか」といった設問にすべきではないか。
1歳6カ月児健診とは
母子保健法に基づく健康診断。国が自治体に、満1歳を超え、満2歳に達しない全ての幼児への実施を義務付けている。身体発育の状況や、栄養状態、歯や口腔(こうくう)疾病、四肢運動障害の有無など11項目を診断。厚生労働省によると、2017年度の受診人数は、97万8831人で、受診率は96.2%。過去5年間、94~96%台で推移している。