2度の流産…元モエヤン池辺愛さんが告白「経験や思いを共有したい」 産婦人科医・遠見さん「経口薬の処置も選べるように」
妊娠9週目「赤ちゃんが動いていません」
「赤ちゃんが動いていません」。第2子を妊娠していた2019年4月。3回目の健診で、こう伝えられた。妊娠9週目。17日前の前回健診では心拍が確認できた。「また動きだしたりしませんか」。ぼうぜんとする中、思わず尋ねた。
子宮内の組織が自然に排出されるのを待つか、手術で除去するか。医師には、手術を勧められた。しかも「なるべく早い方がいい」と。自身も「次の妊娠へ進みたい」と手術を選んだ。
経験して初めて、頻度やリスクを知った
2日後、パーソナリティーを務めるラジオ番組の初回の生放送を終え病院へ。「本当に悲しかった。亡くなった赤ちゃんをおなかに抱えながら元気に振る舞わなくてはいけなくて」。手術前後に付き添ってくれた母親を心配させまいと「大丈夫」とこらえた。
同じ年の秋、再び妊娠したが、9週目で流産した。「硬い手術台の上で、またこれでお別れなんだと。麻酔で意識が遠のくまでボロボロ涙を流していました」
2017年に長女を出産。2人目が欲しいと思いつつ、担当番組に穴をあけられないと先延ばししたのが影響したかと自分を責めた。苦しい時期が続いたが、夫らの支えがあって今年8月、第2子出産にこぎ着けた。
「経験して初めて、流産の頻度や処置の内容、年齢のリスクなどを知った」と明かす。「知識や経験者の思いが社会でもっと共有されてほしい」
統計上は一定数でも、その人にとっては唯一の経験。悲しい思いをした女性が、自分で処置を選べるように
◇安全な対処法に詳しい産婦人科医・遠見才希子(えんみさきこ)さんの話
妊娠初期の流産の多くは染色体異常が原因。受精卵の時点で決まっているが、「あの行動がいけなかったか」と自らを責める人は多い。周囲に言えず一人で悲しみと向き合う人もいる。
私も流産を経験した。統計上は一定数起きることでも、その人には唯一の経験。体に起きていること、次の妊娠への影響など正確な情報を医療者が伝え、共に考えようとすることが、不安な気持ちを和らげるのではないか。
処置にも問題がある。手術は金属製の器具でかき出す掻爬(そうは)や、電動吸引管による吸い出しなどが主体で、怖いと感じる女性は多い。まれだが、手術時に子宮に穴が開く子宮穿孔(せんこう)など合併症の恐れも。プラスチック製真空吸引管を使えばリスクは低いが、全ての施設でできるわけではない。一方で自然排出はいつ来るかが分からずつらい。
海外では、妊娠維持に必要なホルモンの作用を抑えるミフェプリストンと、子宮を収縮させるミソプロストールという経口薬が広く使われている。鎮痛薬も併用し、自分で体の状態を把握しながら進められる。日本では前者は未承認、後者は潰瘍の治療薬だが、流産にも使えるようにすべきだ。悲しい思いをした女性が自分で処置を選べるようにしたい。
流産とは
妊娠22週未満で妊娠が終了すること。加齢で増え、40歳以上では40%を超えるというデータも。妊娠組織が子宮内にとどまる稽留(けいりゅう)流産と、自然に出血などが始まり外に出る進行流産がある。進行流産のうち一部が子宮内に残る状態が不全流産。国は12週以降を子宮内胎児死亡、死産とする。