新型コロナ、妊婦のリスクは? 正しい感染防止の知識を専門医が解説
風疹のような母子感染の可能性は、低い
東京都東久留米市の産婦人科医、太田寛(ひろし)さん(55)は新型コロナウイルスについて「風疹のように胎盤を通じて母子感染したり、赤ちゃんに障害が出たりする可能性は低い。落ち着いてできる範囲の感染予防をしてほしい」と話す。日本産婦人科感染症学会も「感染による流産、死産のリスクが高いとする報告はない」とするが、「一定頻度で子宮内での感染が起きる可能性が報告されている」とも指摘する。
投薬は制限 妊娠末期は重症化の可能性
一方で、妊婦特有のリスクも。同学会副理事長で日本大医学部教授の早川智(さとし)さん(61)は「新型コロナに限らず、妊婦がウイルス感染すると投薬など治療の手段が限られる」と話す。また「妊婦は妊娠末期に横隔膜が上がって呼吸しにくくなるため、呼吸器疾患が重症化する可能性がある」と注意を呼び掛けている。
ネット情報は信頼できる出所かチェックを
ネットなどで妊婦の不安をあおる書き込みが増えているが、出所には注意が必要だ。太田さんは「主治医と相談したり、SNSなら各自が信頼できる専門家のアカウントをフォローしたりして、正しい知識を身につけて」と助言する。
マスク不足も妊婦には悩ましい。ただウイルスの粒子は極めて小さく、「市販のマスクを貫通する」と早川さん。手指で不用意に口や鼻を触るのを防ぐ効果はあるものの、「感染予防の有効性は賛否両論なので、入手できなくても過度に焦る必要はない」。
手洗いが大事 せっけんの泡が”膜”を壊す
大事なのは手洗い。早川さんは「せっけんで十分。泡がウイルスを包む膜を壊し死滅させるので、よく泡立てて」とする。外出後や食事前など、20秒以上手首まで洗う。
体調が悪くなったら、いきなり病院に行くのは控える。「かかりつけ医や主治医に電話で相談し指示を仰いで」と早川さん。家族の感染や、妊婦と感染者との濃厚接触があった場合は、都道府県の「帰国者・接触者相談センター」にすぐ連絡を。PCR検査を受けられる条件も、妊婦は「37.5度以上の発熱や倦怠(けんたい)感が2日以上続く場合(一般の人は4日以上)」と緩和されている。◇
日本産婦人科感染症学会は2月から、妊婦らに向けて公式サイトのお知らせなどで情報発信を続けている。こうした要請などを受けて、厚生労働省は1日、働く妊婦への配慮を経済団体などに要請した。
訂正と経緯(4月13日追記)
第4段落を削除し、新たな情報を追加しました。太田寛さんから「元の記事は話した主旨と異なる」との指摘を受けたためです。
「在宅勤務を認めてほしい」働く妊婦の切実な訴え
仕事を休めずにいる働く妊婦からは悲鳴にも似た声が上がる。
都内の商社勤務の女性(30)は妊娠7カ月。休校中の子どもがいると在宅勤務できるが、妊婦だと1時間の時差出勤のみ。初めての出産に不安を感じながら、毎日片道1時間以上かけて通勤。在宅勤務の仲間のカバーで残業も増えている。
「妊婦も在宅に」と訴えたが却下された。「おなかの小さな命は守るべき命として数えられていない」と疎外感を感じている。
兵庫県の銀行員女性(27)は妊娠4カ月。営業職で、客と近距離で話す機会も多い。「妊娠中は服薬に制限があり、感染した場合、胎児への影響も分からない。国は企業に、妊婦の出勤停止を働きかけてほしい」
産婦人科医の太田寛さんは、休めないうちは「通勤時や職場の感染リスクを下げることが重要」と話す。具体的には、
▽電車のつり革は利き手と反対の手で持つ
▽職場の窓を時々開けて換気
▽ドアノブなど大勢が触る場所の消毒
―などの対策を勧める。
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